映画『アナザーラウンド』は観ましたか?
2021年アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞して話題になりましたね!
「お酒を飲めば人生が変わる」というおかしな謳い文句で繰り広げられるストーリーに笑えることもありながら、その結末に深く考えさせられるような作品です。
この記事では、本作品の概要・あらすじを紹介するとともに、主に5つのポイントでネタバレ解説を行なっています。
- デンマークの飲酒文化
- 実験①:0.05%のアルコールが背中を押す
- 実験②:飲みたいだけ飲んだ先の闇
- 実験③:そして崩壊へ
- あなたはどう生きる?
本作品をより詳しく知れる内容になっていますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
それでは、いってみましょう!
映画『アナザーラウンド』概要
2021年に公開されたデンマークの作品です。
「常にお酒を飲んでおくと人生が豊かになる」という斬新な考えのもと、繰り広げられるブラックユーモアな内容に話題が集まり、2021年第93回アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞しました。
主演を務めるのは、映画『偽りなき者』でカンヌ国際映画賞男優賞を受賞したマッツ・ミケルセンであり、同作品で監督を務めたトマス・ヴィンターベアが本作品でもメガホン取っています。
バカバカしくもあるけれど、人生を考えさせられる深い作品に仕上がっており、多くの著名人からも絶賛の声が多数集まりました!
監督 | トマス・ヴィンターベア |
出演 | マッツ・ミケルセン トマス・ボー・ラーセン マグナス・ミラン ラース・ランゼ |
時間 | 117分 |
ジャンル | ドラマ |
制作 | デンマーク |
予告動画
あらすじ
デンマークの高校で教師をしていたマーティンは冴えない人生を送っており、家族や生徒から忌み嫌われていた
ある日、ノルウェーの哲学者にならって同僚の仲間たちと「常に血中アルコール濃度を0.05%に保つと、人生が豊かになる」という実験を行うことになる
実験の効果が現れ始め、マーティンの日常はどんどん豊かになっていくのであった
同僚の仲間たちにも同様に効果が現れ始めるが、味を占めたマーティンたちは徐々にアルコール濃度を引き上げていき・・・
映画『アナザーラウンド』登場人物/キャスト
本作品の登場人物を紹介します。
同じ高校の教師仲間4人で繰り広げられる物語であるため、抑えておくべき登場人物は4人です。
それぞれキャラクターが引き立っており、バカバカしさや愛くるしさを感じられます。
マーティン/マッツ・ミケルセン
高校で歴史を教えている教師
感情の起伏があまりなく、面白味のないことから生徒や保護者からの評判は悪く、クレームを寄せられている
また、家族に対しても同様であり、妻のアニカとは簡単な会話のみで、息子には愛想悪く接されてしまう
半信半疑ながらも「血中アルコール濃度を0.5%に保つ」という実験を行う
ニコライ/マグナス・ミラン
マーティンと同僚の高校教師
「血中アルコール濃度を0.5%に保つ」という実験の発起人であり、実験内容をレポートに記している
妻と息子がいるが、妻とは喧嘩が絶えず、育児でも手を焼いている
ピーター/ラース・ランゼ
マーティンと同僚の高校教師
マーティンに踊るよう促すも、なかなか応えてもらえない
留年がかかった生徒に寄り添い、リラックスさせるように声かけるなど、優しい一面を持ち合わせる
トミー/トマス・ボー・ラーセン
マーティンと同僚の高校教師
マーティンの夫婦仲を誰よりも気にかけたり、仲間の輪に入れない生徒に寄り添うなど、心優しい一面を持っている
愛犬をこよなく愛している
映画『アナザーラウンド』ネタバレ解説
ここからは、映画『アナザーラウンド』のネタバレ解説を行います。
主に5つのポイントで解説しており、基本的にはストーリーの流れの順番になっていますが、ポイントによっては順不同となることがありますので、一つずつチェックしてみてください!
※ネタバレを含みますので、ご注意ください。
- デンマークの飲酒文化
- 実験①:0.05%のアルコールが背中を押す
- 実験②:飲みたいだけ飲んだ先の闇
- 実験③:そして崩壊へ
- あなたはどう生きる?
デンマークの飲酒文化
本作品を解説する上で、まずはデンマークという国の飲酒文化について紹介します。
デンマークは、日本とは異なりアルコールの飲酒に年齢制限はありません。
そのため、若者であってもお酒を飲む風潮が根付いており、平均で14歳からお酒を飲み始めているのでお酒が好きな人が多いんですね。
しかし、お店などで購入する場合は年齢制限があります。
アルコールの度数で購入できる年齢が決まっており、16.5%以下であれば16歳から購入ができ、18歳からは特に制限は設けられていません。
購入はできなくても、家に親のお酒などがあるでしょうから、普段からお酒に対して寛容な環境で育っています。
本作品の冒頭では、学生が電車の中で暴れ、学校に苦情を寄せられるようなトラブルにも発展しています。
日本では考えられないね!
チームで酒を運ぶ祭りをしているくらいだからね(笑)
実験①:0.05%のアルコールが背中を押す
高校で歴史の教室をしているマーティンは、うだつが上がらない日々を送っていました。
授業も退屈で、生徒たちからは嫌われており、授業をボイコットする生徒までいます。
さらには保護者からはクレームを寄せられてしまうような状況でした。
一方のプライベートにおいても、夫婦間の関係は非常に淡白なものであり、息子たちからは軽くあしらわれてしまい、冴えない生活を送っていました。
そんなある日のニコライの誕生日会にて、ニコライから「血中アルコール濃度を0.05%に保つと、勇気と力がみなぎる」というノルウェーの哲学者の理論を聞きます。
誕生会という盛り上がる場でも、お酒を飲んだり踊ったりすることを拒否していたマーティンはこの話を受け流していましたが、勧められてお酒を飲むと今まで抑えていた本音を打ち明けるのでした。
そして、そのまま同僚の仲間4人組で実験と称して、血中アルコール濃度0.05%に保って生活を送るようになりました。
半信半疑だったものの早速効果が現れ、これまで退屈だったはずのマーティンの授業は、ユーモラスで生徒の笑顔溢れる授業に生まれ変わっていきます。
これまでは教科書を淡々と読み上げ、話も長いだけでしたが、生徒が授業に興味を持てるようにクイズ形式で行うなどの試行錯誤が見られ、一気に授業は盛り上がりを見せていました。
さらに、プライベートにも変化があり、マーティンは「家族でカヌーに行こう」と積極的に家族に働きかけます。
妻のアニカはもちろん驚き、「何かの冗談?」というのですが、マーティンは至って真剣に誘ったのでした。
このように仕事でもプライベートでもこれまでとは一変して良い方向に進み始めています。
さて、ここで考えたいのは、「お酒を飲んだから人生が豊かになったのか?」という点です。
確かにマーティンは、血中アルコール濃度0.5%に保つことでここまでの変化がありましたが、その本質はどうでしょうか?
実験②:飲みたいだけ飲んだ先の闇
4人ともに良い傾向が見られたことにより、血中のアルコール濃度を引き上げることにしました。
マーティンは0.05%から0.1%にすることで、やや酩酊状態になりますが、それでも授業は良い方向に進みます。
ますます生徒から人気を得たマーティンは、プライベートでも良い傾向が現れます。
家族でカヌー旅行に行き、これまで会話という会話がなかった家族にも温かい会話が生まれます。
おそらく、機会を失っただけで家族の全員がそれを望んでいたのでしょう。
そして、マーティンはアニカと久しぶりに性交し、夫婦の愛を確かめ合うのでした。
効果を実感する4人は実験の成功を確信し、どんどんのめり込んでいきます。
なんか嫌な予感がする・・・
そうだね、嫌な予感がするね・・・
実験③:そして崩壊へ
味を占めた4人は、さらに「アルコール濃度を限界まで引き上げる」という実験を行うことになりました。
マーティンは家族とも良い関係を築けていたことから遠慮しますが、お酒を前にして拒むことはできません。
そして4人は限界までお酒を飲み続けるのでした。
本作品を観た人やこの記事を読んでいる人は、すでにわかっていると思いますが、もちろんここから失敗していきます。
分別の効かなくなった4人は乱痴気騒ぎを起こし、それぞれが痛い目に遭います。
ニコライは家のベッドでお漏らしし、トミーは学校の職員会議に酒気を帯びた状態で参加し、そしてマーティンはアニカと喧嘩し、関係の修復が不可能な状態にまで陥ってしまいました。
トミーの計らいで、マーティンはアニカと2人で会うことになりますが、やはりもう戻らないところまで来てしまっていました。
典型的なお酒の失敗って感じだね・・・
マーティンに関しては、これまでの経緯があるから、お酒だけのせいでもないんだけどね・・・
お酒というのは、一時的に力を得られるものであり、人が本質的に変われるものではありません。
そういった意味では、アニカにとって酒に酔ったマーティンより、以前の薄れた関係に戻ってしまう未来が怖かったのではないでしょうか?
あなたはどう生きる?
失敗を経験して、4人ともお酒を断ちましたが、ここで最大の悲劇が起こってしまいます。
トミーが亡くなってしまうのです。
マーティンたちがその訃報を聞いたのは、奇しくも生徒たちの卒業式の真っ最中でした。
取り残された3人はトミーの死を弔い、久しぶりにお酒を交わすのですが、そこにアニカから連絡がありました。
「やっぱり寂しい」
離れて感じる心の空白をマーティンと妻が確かめ合い、これから再び関係を修復していくようでした。
そんな予感をさせる中、そこに卒業した生徒たちが現れます。
マーティンたちもその輪に加わり、生徒たちの旅立ちを祝うのですが、祝いのムードに触発されて控えていたお酒をグッと飲んだマーティンは、断り続けていたダンスを踊るのでした。
本作品のテーマとして、「お酒は飲んでも飲まれるな」や「何事も適度に行うことが大切」ということが挙げられますが、私自身が感じたのは「人生をどう生きるか?」という壮大なテーマです。
自分自身を根本から変えることは難しく、アルコールなどの一種ドーピングにより一時的な力を得ることができますが、そう長くは続きません。
それでも、お酒を適度に飲んでいた時はこれまでの自分では味わえないような瞬間であり、マーティンは「こんな自分になりたい」と思ったはずです。
それが本来の姿なのか、偽りの姿なのか、どう捉えるのかは自分次第です。
「お酒を飲んだから人生が豊かになった」と捉えるのではなく、「自分の行動次第で人生は豊かになる」と捉えると、普段から人生は豊かになるはずです。
最後に華麗に踊ったマーティンは、果たしてどちらなのでしょうか?
「マーティンは結局お酒に飲まれる人生なんだ」と思う人も少ないかもしれませんが、これまでお酒を飲んでも踊る姿がなかったこと、アニカと復縁の兆しが見えたことを踏まえると、少なからずこれまでにない感情を抱いていたのではないかと思います。
まあ、結局はなんにせよ節度が大切ということですね!
各レビューサイトでの評価
本作品の世間の反応について紹介します。
それぞれ点数と主なレビューを3件ずつ紹介していますので、気になる方はぜひリンク先をチェックしてみてください!
Filmarksの使い方については以下の記事を参考になります。
Filmarks
・踊るマーティン最高!ラストシーンは必見
・お酒は苦楽のどちらも存在していることを感じさせる作品
・大切な教訓を教えてくれる作品
Filmarks:『アナザーラウンド』映画情報・感想・評価ページ(https://filmarks.com/movies/91270)
IMDb
・圧倒されて、夢中になってしまった
・マッツ・ミケルセンの演技は圧巻!なぜ主演男優賞にノミネートされていないのか
・面白さと深刻さのバランスが絶妙!
IMDb 『another round』(https://www.imdb.com/title/tt10288566/)
Rotten Tomatoes
・友情とカタルシスが見られる美しい物語
・飲酒についてのテーマであるが、そこに止まらない壮大な内容になっていた
・ラストシーンが鮮明に記憶に残っている
Rotten Tomates 『another round』 (https://www.rottentomatoes.com/m/another_round)
2021年アカデミー賞受賞!
本作品は、2021年第93回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞しました!
- アナザーラウンド/デンマーク
- 少年の君/香港
- コレクティブ 国家の嘘/ルーマニア
- 皮膚を売った男
- アイダよ、何処へ/ボスニア・ヘルツェゴビナ
世界中で評価が非常に高く、アカデミー賞のみならずその年の映画賞において国際長編映画(外国語映画)賞を総なめにしています。
また、本作品で監督を務めたトマス・ヴィンターベアは監督賞でもノミネートされており、国際長編映画賞の受賞スピーチでは、自身の耐え難い悲劇についても語っていました。
本作品の撮影中、彼は自身の娘を交通事故で亡くし、その娘も本作品に出演予定だったとのことです。
「この賞は君に捧げるよ」と言い、受賞スピーチを締めくくりました。
アカデミー賞という場が、彼にとっての弔いになっていたのではないでしょうか?
まとめ
今回の記事では、映画『アナザーラウンド』の概要・あらすじを紹介するとともに、5つのポイントからネタバレ解説を行いました。
- デンマークは飲酒に年齢制限がないため、お酒好きな人が多い
- 血中アルコール濃度を0.5%に保つ実験を行うことで、人生が一変した
- 血中アルコール濃度を上げることで、どんどん人生が豊かになっていった
- 歯止めが効かなくなった4人は、飲酒を続け取り返しのつかない事態を招いた
- お酒に頼るのではなく、自分自身がどう生きていくかを考えることが大切
お酒で失敗した経験のある人は決して少ないと思います。
中には「お酒を飲むと本音を話せる」という人もあるのではないでしょうか?
それは悪いことではなく、お酒の力を借りることで盛り上がる場や話せることなどあるはずです。
しかし、周りの人はお酒を飲んでいるあなたと一緒にいたとしても、お酒を飲んでいるあなたを好きなのではなく、あなた自身のことが好きなのではないでしょうか?
そんなことを思わせてくれる作品です。