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asa(あさ)
映画が大好きな28歳会社員

年間300本程度の映画作品(洋画がほとんど)を鑑賞している映画好きです◎

アカデミー賞で輝く俳優・女優の姿に感動し、アカデミー賞などの映画賞をもとに映画の魅力を発信しています。

【ネタバレ解説】映画『別れる決心』禁断の愛が導く結末とは?考察レビュー

映画『別れる決心』は観ましたか?

この記事では、映画『別れる決心』の概要・あらすじを紹介するとともに、以下の5つのポイントでネタバレ解説をしています。

ポイント
  • 優秀刑事のもとに舞い込んだ変死体
  • ミイラ取りがミイラになった
  • 偶然ではない再会
  • 別れる決心とは?
  • 対立と同化

※ネタバレを含みますので、あらかじめご注意ください。

決して結ばれてはいけない2人の禁断の愛の行方、そして先の読めない展開に目が離せない傑作になっています!

それでは、いってみましょう。

目次

概要

出典:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/

映画『別れる決心』は、2023年に公開された韓国のミステリー映画です。

監督を務めたのは、『オールドボーイ』や『渇き』や『お嬢さん』を手がけたパク・ヌチャク監督です。

『オールドボーイ』ではカンヌ国際映画祭でグランプリ、『渇き』では審査員賞を受賞するなど、数々の実績を残した同監督の最新作ということもあり、世界中でも大きな話題を呼んだ一作になっています。

刑事と容疑者という相反する立場の2人が次第に惹かれ合い、禁断の愛に陥っていく様子と、複雑に絡み合うミステリーに目が離せません。

また、本作品は世界中で高い評価を獲得し、数々の賞にノミネートされました。

監督/脚本パク・チャヌク
出演パク・ヘイル
タン・ウェイ
イ・ジョンヒョン
コ・ギョンピョ
時間138分
ジャンルミステリー/クライム
制作韓国
公開2023年2月17日

予告動画

あらすじ

史上最年少で警部に昇進するほどの優秀な刑事であったヘジュンは、ある山から男性が転落死した事件について捜査を行なっていた

容疑者として浮かんだのは妻のソレであり、彼女を取り調べしていく中で、ヘジュンとソレはお互いに惹かれあっていく

事件は解決したように思えたが、浮かび上がってきた真相はヘジュンを惑わした

錯綜する2人の思いが導く驚きの結末とは・・・

登場人物

ネタバレ解説を行う前に、本作品の登場人物・キャストを紹介します。

基本的には主人公の2人の物語であるため、覚えておくキャラクターは少なめになっていますので、しっかりチェックしてくださいね。

出演されたキャストの皆さんの演技も素晴らしく、本作品を語る上で欠かせない重要な要素になっています。

チャン・ヘジュン/パク・ヘイル

出典:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/

史上最年少で警部に昇進した優秀な刑事

事件の解決に執念を燃やしているが、そのことを考えるあまり不眠に悩まされている

妻のジョンアンとは週末婚というスタイルで生活を共にしている

捜査に余念がないことが仇となり、ソレに惹かれていく

ソン・ソレ/タン・ウェイ

出典:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/

山から転落死した男性の妻

中国人であるため、韓国語が完璧には話せない

なかなか掴みにくい態度で、ヘジュンをはじめとした刑事を撹乱していく

壮絶な過去を持っている

アン・ジョンアン/イ・ジョンヒョン

出典:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/

原子力発電所に勤務しており、優秀なキャリアウーマン

自身の職場の関係により、夫のヘジュンとは週末コンのスタイルで生活を共にしている

タバコを極端に嫌い、禁煙したヘジュンからタバコの匂いがした際には強く反発している

ネタバレ解説

出典:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/

ここからは、映画『別れる決心』のネタバレ解説を行います。

改めて本作品の5つのポイントをおさらいしておきましょう。

ポイント
  • 優秀刑事のもとに舞い込んだ変死体
  • ミイラ取りがミイラになった
  • 偶然ではない再会
  • 別れる決心とは?
  • 対立と同化

物語が進むにつれて、あらゆることが交錯し、やや難解でもあるため、この解説を読んで少しでも理解を深くしてもらえたら幸いです。

※ネタバレを含みますので、ご注意ください。また、ストーリーを全て紹介しているものではありませんので、あらかじめご了承ください。

優秀刑事のもとに舞い込んだ変死体

釜山で刑事として活躍していたジェフンのもとに、山から転落した変死体が発見されるという不可解な事件が舞い降りてきました。

ヘジュンが捜査を行うにあたり、死亡した人物にはそれという妻がいることがわかります。

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ちなみにヘジュンは捜査のメモを音声で残しています

彼女は中国人であるため、あまり韓国語をうまく話すことができませんでした。

ソレはとても愛する夫が亡くなったとは思えないほど平然としており、ヘジュンはソレの身体からDVの痕が見つかったことも踏まえて犯人ではないかと疑うようになりました。

取り調べを行いますが、ソレの態度は相変わらずです。

平気で服を捲り上げ身体を撮影させたり、講師の言葉を紹介して容疑を否認したり・・・

へジュンはすっかりソレのペースに乗せられてしまいました。

そして、操作を進めていく中で、事件当日、ソレは介護の仕事をしていたというアリバイがあることがわかります。

それでもへジュンは疑念を捨てきれず、張り込みなどの捜査を行うのでした。

しかし、チルゴク町事件という未解決事件の犯人も同時に追っており、へジュンが犯人の1人を追跡している際にソレはこっそりその現場を見てきていました。

へジュンは、ソレへの張り込みを続け、双眼鏡で部屋の中を覗いていたのですが、どんどんソレへの疑いがソレへの興味に変わってくるのです。

もともと不眠だったへジュンは、ソレを張り込んで覗いた日には、近くの駐車場でぐっすり眠れるようになっていたのでした。

ソレが自身の母親を殺人していたということが明らかになりますが、それは母からのお願いであったことや、亡くなった夫の遺書や不法入国への告発文が見つかったことなどから自殺と断定されます。

本作品の特徴的な演出として、へジュンが想像するシーンにおいて、実際にその場にいないのにいるように見せる、というものがあります。

これは後々解説する「対立と同化」を強調するような演出となっており、ここではへジュンがどんどんソレの内部に入り込んでいっていることから、ソレに夢中になっていることがわかります。

それは刑事として捜査によるものなのか、はたまた別のものなのか・・・ここから物語がどんどん複雑になっていきます。

ミイラ取りがミイラになった

捜査をしていく中で距離を縮めいていた2人でしたが、容疑が晴れたソレに対して、へジュンは料理を振る舞いました。

asa(あさ)

いつもアイスクリームばかり食べてましたからね・・・

へジュンの部屋には未解決事件の写真があり、そのことを考えて不眠になっていることを明かします。

ソレはへジュンを再び部屋を訪れますが、自身の夫の写真を「解決したから」と言って勝手に燃やしてしまいます。

そうしていく中で、自身の身体が移された写真が貼られていることに気づきました。

へジュンはソレの写真を捨てることを拒み、思わず「シルエットがきれいです」と打ち明けてしまいます。

そして、へジュンが寝るまでそばに居てあげるのでした。

さらに距離を縮めた2人は、デートかのようにおでかけし、普段からも部屋を行き来する関係になっていました。

へジュンはすっかりソレに夢中になっていたある日、ソレが介護していたおばあさんのもとにへジュンがソレの代わりに行くことになります。

そして、そこでおばあさんの携帯で記録されている階段を登った歩数が事件当日だけ多いことがわかり、ソレが事件当日に自身の携帯とおばあさんの携帯をすり替えていたのではないかと疑います。

さらに、ソレの手が昔は柔らかかったが、最近は硬くなったという話を聞き、へジュンは事件が起こった山に向かいます。

そうして山に登った時に、同じ歩数となり、傷だらけになった自身の手を見て、ソレがやはり夫を殺していたのだと確信するのでした。

激怒したへジュンは急いでソレのもとに向かいますが、2人はもはや後戻りのできない関係になっています。

へジュンは「刑事としての誇りが崩壊した」と言い、携帯を捨てて証拠の隠滅をするようソレに指示するのでした。

「刑事の勘」というべきか、もともと疑っていたわけですが、疑ったがゆえに好きになってしまったわけですね。
よくミステリー小説などで、愛する人に対して「犯人じゃない理由を探していたら、決定的な証拠を見つけてしまった」という展開もありますよね。

まさに、ミイラ取りがミイラになってしまったわけです。
刑事としてはあるまじき行為であるにもかかわらず、人間としての弱さと愛の罪深さを感じさせる展開になっています。

そうして一生解決のできない未解決事件になってしまったのですね。

偶然ではない再会

ヘジュンは失意のまま釜山を離れ、妻ジョンアンのいるイポ市に転勤しました。

以前の敏腕刑事の面影はなく、魂の抜けたような姿になっていたへジュンですが、そこになんとソレが現れます。

ソレは再婚をしており、その新しい夫は投資詐欺をしているような人でした。

へジュンがジョンアンと歩いている時に、たまたま遭遇し、少しだけ会話し、名刺の交換をしてその場を後にします。

そして翌日、そのソレの夫が殺される事件が起こりました。

asa(あさ)

デジャブですね〜

捜査にあたることになったへジュンは一目散でソレのもとに駆け寄り、「おちょくってるんですか?このためにイポ市に来たんですか?」と激怒します。

そして、一件目のことがあるため、ソレへの執念が大きくなり、ソレを犯人と決めつけて捜査を行っていました。

しかしながら、真犯人は別の人物であり、ソレではありませんでした。

ソレが夫の携帯を海に捨てたことを知り、へジュンは急いでソレの家に行きますが、ソレはある山にいると言います。

裁判で国の所有となっていた山でしたが、もともとソレの先祖が持っていた山であり、ソレの両親の遺骨を蒔くために来ていました。

ソレは、「私と離れて眠れなくなったでしょう?再開して、あなたは生き返ったようだった」と言い、ヘジュンの頬に触れます。

へジュンが遺骨を蒔いている時、ソレは後ろから抱きしめ、捨たたはずの携帯を差し出し、「再捜査して崩壊の前に戻って」と言います。

そして、「あなたの未解決事件になりたくて、イポ市に来た」と言い、ついに2人は口付けをするのでした。

その後、ソレは再び姿を消すのですが、ソレが投げ捨てた夫の携帯が見つかり、中を確認したところ、音声データによりへジュンとソレの関係が夫にバレてしまい、へジュンの妻などに暴露すると脅されていたことがわかります。

バレてしまうことを恐れたソレは、自身の母を殺害した薬を用いて投資詐欺に遭った被疑者を殺害し、その息子に夫を殺すように仕向けたことが明らかになりました。

ヘジュンはソレの行方を追う中で、電話で「僕のせいだ」と言い、どんな音声データだったのかとソレに尋ねたところ、「私を愛している」と言ってくれたことと言うのでした。

同じような事件が再び起きましたが、ソレの犯行ではなく、しかしながらそのきっかけを作ったのはソレだった、という非常に複雑な構造になっていますね。

そして、その犯行がただヘジュンを守るためであった、というソレの純粋な愛であり、ヘジュンは自身への愛が起こした犯行を自ら捜査しなければならない、という刑事としての誇りと愛のジレンマに挟まれてしまっています。

別れる決心とは?

ヘジュンはソレに「愛している」と言ったことに対して、「深い海にその携帯は捨てて」と言います。

ソレは海に行き、砂浜に穴を掘ります。

その「愛している」という言葉とは、直接的な言葉ではなく、刑事としての誇りを捨てて自身の罪を隠蔽してくれたことのことを指していました。

ソレは「ヘジュンにとっての未解決事件になりたい、壁に貼って、ずっと眠れずにひたすら私のことを考えて」と言い、穴を掘った砂浜に身を投じ、海の中に消えていくのです。

ヘジュンは必死に探しますが、塩が満ちてきた海では、すでにソレの姿は消えてしまいました。

タイトル『別れの決心』
その「別れの決心」とは何だったのか?

ヘジュンにとっては、刑事の誇りを捨てる代わりに関わりを断ち、釜山を離れイポ市に来ることでしたが、ソレにとってはもっともっと大きな決心でした。

会いたい人と簡単に会えない関係になったにもかかわらず、その人のことを思い、一度は他の男性と結婚して別れる決心をしたものの、消せないもの(「愛している」と言ってくれた音声データ)がありました。

夫は死んだものの、いずれソレの殺人が立証された際にヘジュンとの関係がバレてしまうのも時間の問題です。
これまでの罪が明かされてしまっては未解決事件になれないため、証拠(ソレ自身)を消してしまうことこそが最大の「別れの決心」だったわけですね。

対立と同化

本作品は「対立と同化」ということが主なテーマとなっています。

対立
  • 刑事と容疑者
  • 言葉と写真
  • 見る人と見られる人
  • 自殺と他殺
  • 中国人と韓国人
  • 海と山

このように対になっている構造がわざとらしく強調されていましたが、次第にこれらが同化していく様が描かれています。

本来は違うところにあるものであるにもかかわらず、次第に引き寄せられたり、交わっていったりしており、その間には形容し難い“深い愛”が存在していました。

そして、その深い愛が最後は交わりきれなかったことを示すかのように、本作品の1番の対立である「海と山」が描かれていましたね。

山で2人は初めて口付けを交わし、制限を超えた愛を表現していましたが、最終的には海で別れを告げるわけです。

「賢いものは水を好み、慈悲深い人は山を好む」という孔子の言葉が語られていましたが、最後の最後に回収されるという非常にお見事なラストでもありましたね。

ソレは「あなたの未解決事件になりたい」という言葉を残しましたが、きっとへジュンはこれまで以上に眠れない日々を過ごしていくのでしょう。

しかし、ソレにとってはソレがいいのかもしれません。

事件が起きない限り、自身が被疑者とならない限りは会えないわけですので、彼女はヘジュンの記憶と同化し、ずっと脳内に居座り続けることを望んでいるのでしょうね。

各レビューサイトでの評価

本作品の世間の反応や評価について紹介します。

それぞれ点数と主なレビューを3件ずつ紹介していますので、気になる方はぜひリンク先をチェックしてみてください!

Filmarksの使い方については以下の記事を参考になります。

Filmarks

3.7/5

・パク・チャヌク監督らしい戯画作品になっている

・現実と妄想が本能的に入り乱れてて、物語構成も非常に幻想的になっていた

・自分には難しかったけど、人間は説明のできない生物だと感じられる作品であった

Filmarks:『別れる決心』映画情報・感想・評価ページ(https://filmarks.com/movies/102731

IMDb

7.3/10

・信じられないような心理スリラーに仕上がっている作品

・ミステリーの要素が冒頭から満載であり、物語をうまく繋ぎ合わせ、魂に響くような結末になっていた

・奇妙な脚本と陰湿でプロフェッショナルな演技に魅了された

IMDb『Decision to Leave』(https://www.imdb.com/title/tt12477480/

Rotten Tomatoes

94%

・隠している感情がくすぶっている最も純粋な作品

・対立と親密な深淵を、抒情性と美を組み合わせて、並外れた解像度を達成している

・複雑な要素と感情的な要素がシームレスに融合した魅力的な殺人ミステリー

Rotten Tomatoes『Decision to Leave』(https://www.rottentomatoes.com/m/decision_to_leave

世界各国から称賛の嵐!

出典:https://variety.com/2022/film/news/park-chan-wook-decision-to-leave-cannes-standing-ovation-1235274978/

本作品は世界中で大きな評価を集め、多くの映画祭や映画賞にノミネートされました。

韓国の映画作品は、世界で大きな評価を集めていますが、その韓国の映画文化の地位をさらに一段階上に押し上げた作品になっているのではないでしょうか?

2019年に公開された映画『パラサイト 半地下の家族』以来のアカデミー賞受賞に最も近づいた作品と言っても過言ではありません。

惜しくもアカデミー賞にはノミネートされませんでしたが、ゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞ではノミネートされ、存在感を残しています。

  • ゴールデングローブ賞:外国語映画賞
  • 英国アカデミー賞(BAFTA):外国語映画賞、監督賞

そして、なんと言っても欠かせない話題として、本作品はフランスで開催されるカンヌ国際映画祭で見事監督賞を受賞しました!

最高賞にあたるパルム・ドールにもノミネートされておりましたが、こちらは惜しくも受賞を逃しました。

本作品の概要でも記載していますが、パク・ヌチャク監督は、『オールドボーイ』、『渇き』に続く自身3度目のカンヌ国際映画祭の受賞となっており、その評価の高さが伺えます。

韓国の作品においては、2019年に『パラサイト 半地下の家族』でパルム・ドールを受賞しており、是枝裕和監督が手がけた『ベイビー・ブローカー』では、主演のソン・ガンホが主演男優賞を受賞していましたね。

アジアの映画が世界の主要な映画祭で評価されることはとても嬉しいことですが、是枝裕和監督といえば、2023年のカンヌ国際映画祭で『怪物』が見事に脚本賞を受賞しました!

まとめ

この記事では、映画『別れの決心』の概要・あらすじを紹介するとともに、5つのポイントでネタバレ解説を行いました。

まとめ
  • 刑事として容疑者を捜査するうちに、気持ちが惹かれていってしまった
  • 容疑が晴れたかと思われたが、結局ソレが犯人であり、ヘジュンは愛を選んで証拠を隠滅した
  • 再開したものの、ソレはへジュンを守るために殺人の罪を犯した
  • ずっとへジュンの記憶に残るために、ソレは「別れの決心」をして自ら命を絶った
  • 本作品では、対立したものが次第に同化する模様が強調されていた

禁断の愛でありながらも、非常に美しい物語になっているように感じられる作品でした。

複雑に入り混じっていましたが、最終的には「交わってはいけない者たちの純愛」というわかりやすくも悲しい結末になっていましたね。

韓国映画の真骨頂とも言える要素がたくさん詰まった作品になっていますので、一度観た方も改めて観直してみてください!

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