短編映画『フィーリング スルー』は観ましたか?
Youtubeのショート動画で235万回の再生を記録し、日本の中でも大きな話題を呼んだ作品です。
盲目で耳が聞こえない(盲ろう)の男性とホームレスの若者の束の間の絆を描いた本作品は、アカデミー賞でもノミネートされています。

本当に心が温まる作品です
この記事では、短編映画『フィーリング スルー』の概要・あらすじを紹介するとともに、内容に詳しく触れながらネタバレ解説を行なっています。
※ネタバレを含みますので、ご注意ください。
さらに、本作品の視聴方法についても紹介していますので、気になる方はぜひそちらからチェックしてみてください!
それでは、いってみましょう!
短編映画『フィーリング スルー』概要


短編映画『フィーリング スルー』は2019年に制作された短編映画です。
盲目で耳が聞こえない男性とホームレスの若者が偶然出会い、ある夜をともに過ごす中で関係を深めていく物語です。
2021年のアカデミー賞では、短編実写映画賞にノミネートされ、大きな注目を浴びました。
盲目の男性アーティを演じたロバート・タランゴは実際に盲目で耳が聞こえない(盲ろう)方で、盲ろうの方が主演を務めた世界初の作品にもなります。
心が温まり、自然と涙が溢れてくるような内容で、明日を生き抜く活力を与えてくれます。
監督 | ダグ・ローランド |
出演 | スティーブン・プレスコッド Robert Tarango |
時間 | 18分 |
ジャンル | 短編/ショートフィルム |
制作 | アメリカ |
短編映画『フィーリング スルー』を見る方法
短編映画『フィーリング スルー』は、現在ショート映画配信サービスのSAMANSA(https://lp.samansa.com/)でのみ視聴可能です。
SAMANSAは月額250円という非常に格安で利用することができ、登録から7日間は無料で体験することができます!
作品数も300作品以上揃えられていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください!
予告動画
あらすじ
ニューヨークの夜
帰る家がない黒人の若者テリークは、帰る家を探すために友人などに連絡するが断られてしまっていた
夜の街を徘徊していたら、盲ろうの男性アーティと出会う
目も見えない、耳も聞こえないアーティとのコミュニケーションに最初は苦労をするものの、徐々に2人の距離は縮まっていく
短編映画『フィーリング スルー』ネタバレ解説
このパートからは本作品のネタバレ解説を紹介します。
作品時間は18分という短い作品になっていますが、とても内容の濃い作品になっていますので、ぜひこの解説を読んで改めて作品に触れてみてください。
※ネタバレを含みますので、ご注意ください。
起:生産性のないホームレス生活


テリークは駅の改札に立ち、出てくる人々に「お金を貸してください」と声をかけますが、もちろん無視されてしまいます。
ニューヨークでは、若者のホームレスは問題になっており、その問題は小学生などの児童にも及んでいるそうです。
本作品の主人公テリークは児童といういうほど幼くもなく、十分経済的に自立できそうな年齢ではありますが、なかなか働き口がないのかもしれません。
夜になると友人と夜の街で遊び、少しばかりの時間を過ごしますが、それでも友人は家族からの連絡で家に帰宅していき、テリークは一人となってしまいました。
なんとか別の友人を頼り、その日は泊まらせてもらえることになりますが、ここから本作品の物語がスタートします。
テリークには家族はいないのだろうか?という疑問も浮かんできますが、このテリークの現状がニューヨークの困窮している若者の問題を象徴しています。
承:盲ろうの男性との出会い


これから一晩どうやって過ごそうかと困っていたテリークの前に現れたのは、「恵んでください」と紙コップを片手に持つホームレスの男性でした。
テリークは「渡す金なんてない!」と突っぱねますが、その男性が次に声をかけたのがアーティでした。
アーティは「盲目で耳も聞こえません。一緒に歩いてくれる人は肩を貸してください」と書かれたボードを手に持っていました。
声をかけますが、もちろん反応はありません。
テリークは恐る恐るアーティに触れると、アーティはカバンからノートを取り出し「バス停まで連れて行ってください」と書いて見せてきます。
バス停の方向に体を向かせ、「すぐそこだから」とその場を離れようとしますが、結局肩を貸すことになりました。
友人から「いつ来るの?もう遅いんだけど・・・」と連絡が入り、すぐにでも友人の家に行きたいところですが、「もう着く」と返信をし、アーティのお願いを聞くのでした。
転①:生まれる束の間の絆


友人の家に行かなければならないため、一刻も早くこの場を離れたいテリークでしたが、結局バスが来るまでの時間をアーティと共に過ごすことになります。
テリークは、アーティの手のひらに文字を書くことでコミュニケーションを図っていました。
アーティが「飲み物が飲みたいんだけど、近くにコンビニはある?」と聞き、テリークは「少し我慢して」と伝えますが、二人はコンビニに行くことになりました。
コンビニで飲み物を選び、レジで支払う際にテリークはスニッカーズを一緒にレジに置きます。
さらにアーティの財布で支払い、お釣りのお札を一枚自分のポケットに入れました。
店員さんがその光景を訝しげに見ていると、「そんなに障がい者が珍しいか?」とテリークは言い放ちます。



いやいや、そこじゃないのよって感じですよね
そんなこんなしていたらバスに乗り遅れてしまい、再びバス停で次のバスを待つことになりました。
コミュニケーションを交わす中で、アーティは手に文字を書き込むテリークの手を握り、「君は若いな!!」と声を出します。
二人は名前を教え合い、テリークはアーティに「夜遅くに何をしていたの?」と聞くと、「デートさ!」と答えたのでした。
テリークは「俺も同じ」と答え、二人は笑い合い、そのままバス停で眠ってしまいます。
転②:なぜ若者は親切にできたのか?


テリークは、アーティがコミュニケーションで使用していたノートを手に取ります。
そこにはこれまでアーティが発した言葉が連ねられていました。
「ドアを閉めてください」などのお願いがたくさん書かれていましたが、中には「キスしてもいい?」という言葉がありました。
テリークは、アーティが希望を持って生きていることを知り、テリーク自身も目を瞑り耳を塞ぎ、アーティの生きる環境を体感してみました。
目を開けるとバスが通りかかり、中に乗り込みますが、テリークはアーティが無事家に辿り着けるかが心配で仕方がありません。
バスの運転手のいい加減な態度に怒り、ちゃんと家まで送り届けるように強く言うのでした。
出会った頃のテリークとは別人となり、アーティに対する心が生まれていることがわかりますね。
なぜ、テリークはわずかな時間でアーティにここまでの親切ができたのか?
このことを少し考えていきたいと思います。
アーティは目も見えない、耳も聞こえないわけですから、その場を離れてしまうこともやろうと思えばできます。
それが人道的かと言われれば、全くそうは思いませんが・・・
ここでテリークがアーティに親切にできたのは、テリーク自身が人の親切を欲していたからではないかと推測します。
もちろん、純粋なテリークの優しさ、責任感の強さ、人としての心を強く持っていることも大きな要因だと思いますが、きっとそれだけではないのではないかと思いました。
帰る家がなく、一緒に夜を過ごそうと思った友達は自分を置いて家に帰り、通りかかりの人々は見向きもしてくれない、そんな鬱屈した日常を過ごしていたため、困っている時に助けてもらえない辛さがわかったのかもしれません。
結:そして若者は前を向く


アーティをバスに乗せた帰り道、テリークはアーティと出会う前に突っぱねたホームレスの男性が路上で寝ていました。
テリークは、コンビニで自分のポケットに入れたアーティのお金をホームレスの男性が持つ紙コップにそっと入れて立ち去るのでした。
ここで物語は終わります。
たった数時間のわずかな出会いから生きる希望を見出し、また前を向いて歩き出す、という素敵な物語です。
本作品は、一見すると「障がい者の辛い現状」みたいな捉え方をされることもあるかもしれませんが、それは違います。
なぜなら、アーティは終始笑顔で何ら不幸そうな表情をしていませんでした。
逆にテリークは自分の人生に満足がいかず、不満そうな表情を浮かべています。
やはり人生の幸・不幸は己が決める以外に他なりません。
どんな環境であっても、幸せな人生だと思うのか、それとも何でこんな人生なんだと悲観するのか、あなたならどちらを選びますか?
生きることの力強さと勇気を与えてくれるような作品になっていますね。
各レビューサイトでの評価


本作品の世間の反応について紹介します。
それぞれ点数と主なレビューを3件ずつ紹介していますので、気になる方はぜひリンク先をチェックしてみてください!
Filmarksの使い方については以下の記事を参考になります。


Filmarks
・とてもハートフルな作品
・わずか18分ではあったが、とても心に刺さるものがあった
・伝えることの大切さ、伝わることの難しさを感じる
Filmarks:『フェーリング スルー』映画情報・感想・評価ページ(https://filmarks.com/movies/95532)
IMDb
・とてもシンプルだけど、人間らしいストーリーで素晴らしい
・人間であることの意味についての作品であり、二人とも素晴らしく、とても説得力がある
・あまりに短いのが残念・・・もっと見たくなる
IMDb 『Feeling Through』(https://www.imdb.com/title/tt9280166/)
2021年第93回アカデミー賞 短編実写映画賞にノミネート!


本作品は2021年第93回アカデミー賞にて、短編実写映画賞にノミネートされました!
結果は、惜しくも受賞とはなりませんでしたが、世界の短編映画の中の5作品に選ばれただけでも十分すごいことですね!
さらに、アカデミー賞は惜しくも受賞とはなりませんでしたが、多くの賞を受賞し、その数は103にも上ると言われています。
ちなみに2021年第93回アカデミー賞で短編実写映画賞を受賞した作品は、Netflixオリジナル短編映画『隔たる世界の2人』でした。
まとめ
この記事では、短編映画『フィーリング スルー』の概要、あらすじを紹介し、ネタバレ解説を行いました。
世界で初めて盲ろうの方が主演を務めたというだけでも注目を集めていましたが、その期待を遥かに超える傑作として名を馳せています。
わずか18分でこれだけ話題となっているわけですから、まさに映画の力を感じられる作品ですよね。
短編映画には短編映画の魅力があります。
その性質上、あまり深くは語られないことが多いので、観ている私たちに委ねられます。
『フィーリング スルー』を観て、あなたはどんなことを感じましたか?

