映画『エンパイア・オブ・ライト』は観ましたか?
2023年2月に日本で公開されたイギリスとアメリカのドラマ映画です。
イギリスの海辺にある小さな映画館に務め、心に闇を抱える中年女性と黒人の青年の交流を通して、生きていく上で大切にするべき教訓を教えてくれる作品になっています。
この記事では、映画『エンパイア・オブ・ライト』の概要・あらすじを紹介するとともに、主に5つのポイントでネタバレ解説を行なっています。
- 舞台はイギリスの海辺の映画館
- 青年スティーブンとの出会い
- ヒラリーが心に抱えた闇
- 大切なひとが傷付いて気付いたこと
- 心の解放
本作品をより詳しく知れる内容になっていますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
※ネタバレが含まれていますので、あらかじめご注意ください。
それでは、いってみましょう!
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概要

映画『エンパイア・オブ・ライト』は、2023年に公開されたイギリス・アメリカのドラマ映画です。
イギリスの海辺の映画館を舞台に、心に闇を抱えたヒラリーと夢を諦めた黒人のスティーブンの交流を描いています。
本作品の監督を務めるのは、『アメリカン・ビューティ』や『1917 命をかけた伝令』でアカデミー賞を受賞したサム・メンデス監督であり、主演のヒラリーを演じるのは、『女王陛下のお気に入り』でアカデミー賞主演女優を受賞したオリヴィア・コールマンです。
2023年第95回アカデミー賞では撮影賞のノミネートされており、作品内で描かれている海辺の綺麗な風景にも注目してみてください。
監督 | サム・メンデス |
出演 | オリヴィア・コールマン マイケル・ワード コリン・ファース トビー・ジョーンズ |
時間 | 119分 |
ジャンル | ドラマ/恋愛 |
制作 | イギリス/アメリカ |
予告動画
あらすじ
イギリスの海辺に構える映画館「エンパイア劇場」で統括マネージャーを務めるヒラリーは過去のトラウマから心に病みを抱えていた
エンパイア劇場に新しく入ってきた黒人の青年スティーブンと出会い、二人は秘密を共有し親密になっていくが、ボタンの掛け違いからヒラリーは再び心を閉ざしてしまう
ヒラリーは回復したのだが、黒人であるスティーブンは暴動に巻き込まれて重症を追ってしまい、、、

ネタバレ解説

ここからは、映画『エンパイア・オブ・ライト』のネタバレ解説を行います。
主に5つのポイントで解説しており、基本的にはストーリーの流れの順番になっていますが、ポイントによっては順不同となることがありますので、一つずつチェックしてみてください!
- 舞台はイギリスの海辺の映画館
- 青年スティーブンとの出会い
- ヒラリーが心に抱えた闇
- 大切なひとが傷付いて気付いたこと
- 心の解放
※ネタバレを含みますので、ご注意ください。
舞台はイギリスの海辺の映画館
イギリスの海辺に構える小さな映画館「エンパイア劇場」
そこで統括マネージャーを務めている中年女性のヒラリーは、あまり感情を表に出さない女性でした。
同僚が明るく楽しそうにしているものの、いつも側から眺めています。
そんなヒラリーは、映画館の支配人であるエリスと身体の関係であり、いつも都合のいいように関係を迫られています。
彼女は過去のトラウマの影響で精神病院に通っており、感情が表に出ないのも、そのトラウマが原因と言えるでしょう。
ある日、エリスはいつも通りヒラリーを呼び出し、エンパイア劇場で『炎のランナー』のプレミア上映が決まったこと告げました。
ヒラリーがエリスとの関係を危惧していることとは裏腹に、エリスは小さな映画館であるエンパイア劇場がプレミア上映に選ばれたことに有頂天になり、スタッフ一同で準備を進めていきます。
青年スティーブンとの出会い
楽しいことは何もなく、上司とのよからぬ関係を迫られ続けるヒラリーにとって、人生は決して良いものものではありませんでしたが、ある日黒人の青年であるスティーブンが新しく入社してきます。
明るい性格のスティーブンは、ヒラリーに対して積極的に関わろうとし、2人は立ち入り禁止エリアである上の階に入りました。
そこには、今は使用していないスクリーンがあり、大量の鳩が住み着いていました。
その中で怪我している鳩の手当てを行ったスティーブンの姿を見て、ヒラリーはスティーブンに惹かれていきます。
ヒラリーが勢いでキスをしてしまったことをきっかけに2人の関係は進展し、プライベートでも2人で一緒に過ごす時間が増えていきました。
ある日、スティーブンから「学校で建築学を学びたかったけど、無理だった」という話を聞き、「自分の望む人生は自分で掴み取るもの」と背中を推押します。
スティーブンの存在により、ヒラリーの心は前向きになっていき、エリスから身体の関係を求められても勇気を振り絞って断るのでした。
晴れやかな気持ちになったヒラリーは、以前スティーブンが手当した鳩の怪我が治癒し、飛び立っていく姿を見て「私も飛び立ちたい」と言います。

まさにヒラリー自身も怪我が治癒(支配人との関係解消)し、飛び立てたのでしょうね
しかし、2人で過ごす時間が増えていったことで、周りのスタッフにもスタッフに2人の関係が疑われ始めます。
ヒラリーはこれまで感情を抑え、自分から積極的な姿勢を見せることはなかったので、スティーブンのような若くて明るい性格の男性が自分のために時間を使ってくれることは非常に嬉しいことだったのでしょう。
ヒラリーが心に抱えた闇
2人はさらに関係を深め、ある日海に出かけます。
砂浜で城を作りながらお互いの過去の話になるのですが、ヒラリーは一向に自身の過去を話そうとしません。
ついには不機嫌になってしまい、男性に対する嫌悪感を爆発させるのでした。



ヒラリーのトラウマは、過去の男性とのことが原因であることが伺えます
翌日、同僚に2人の関係を忠告されたことで、ヒラリーはスティーブンに関係をはっきりさせようと言いますが、スティーブンは何やら煮え切らない様子です。
それに激怒したヒラリーは「私が恥ずかしいのね」と言い、その場から立ち去り、しばらく姿を消してしまいまいた。



スティーブンの表情からは、そんな風には見えなかったけど・・・



スティーブンは、自分が黒人なこともあってヒラリーに迷惑をかけてしまうと思っていたんだね
困り果てたスティーブンは、同僚からヒラリーの過去の話を聞き、精神的に問題を持っていることを知ります。
放っておけないスティーブンはヒラリーの家を訪れますが、居留守を使われて会うことができません。
そのような状況の中、劇場はプレミア上映の日を迎え、多くの著名人が劇場に来ていましたが、そこには華やかな衣装を身に纏ったヒラリーが現れたのです。
ヒラリーは予定になかったにも関わらずステージに上がり統括マネージャーとして挨拶をしますが、ヒラリーの言葉から劇場は少し不穏な空気が流れます。
激怒したエリスはヒラリーを攻めたてたのですが、ヒラリーはエリスの奥さんに自身の関係について暴露し始めました。
焦ったエリスは、「彼女は統合失調症だから気にするな!」と取り繕いますが、どこか錯乱したような様子のヒラリーは「机の中にその証拠がある」と吐き捨てその場を立ち去り、再び姿を消します。
スティーブンの態度から「また裏切られた」と過去のトラウマが蘇り、一時は治っていた精神的な病が発症してしまったのです。
スティーブンは再びヒラリーの家を訪れ治療を勧めますが、「余計なお世話だ!」と責められてしまいます。
そこでヒラリーは過去の話を初め、男性だけではなく両親からも酷い仕打ちを受けてきており、その他にも裏切られてきた男性の名前を列挙しました。
「私は正気だ」と訴えるものの、日常から様子がおかしくなっていたため、近隣住民からの通報で警察が押しかけてきます。
そうしてヒラリーはソーシャルワーカーの説得で連行されてしまいました。



一度治癒したと思っていることでも、あらゆることが複雑に絡み合い、再び発症してしまうのはよくあるケースですね
大切な人が傷付いて気付いたこと
スティーブンは、ヒラリーがいなくなった後は映写技師の仕事を手伝い、その魅力にハマっていきました。
ある日、公園のベンチでヒラリーが座っているところを発見し、劇場に復帰するように誘います。
スティーブンの優しさに触れ、「会いたかった」というヒラリーは、劇場のメンバーたちからも祝福を受けました。
平和な日常が戻ってきたかと思っていた矢先、劇場の外で暴動が起きていました。
失業率が高まったことによる黒人へのヘイトが爆発していたのです。
1980年代、マーガレット・サッチャーが首相となっていたとき、「サッチャリズム」という経済政策が原因となり失業率が急激に高まる。
働き口をなくした国民は「移民が原因だ」と考え、黒人へのヘイトが高まっていった
スティーブンは巻き込まれ、意識を失うほどの重傷を負ってしまい、病院に搬送されてしまいました。
心配するヒラリーでしたが、自分が行くと迷惑になるのではないか、と考え行けずにいたところ、映写技師のノーマンに「逃げるな」と背中を押されて病院に向かいます。
自分がスティーブンにスティーブンに会っていいものなのか、と気が引けていたところ、看護師のスティーブンの母から「スティーブンはヒラリーを求めている」という言葉を聞きしました。
そして、ヒラリーはその足で映画館に行き、ノーマンにお願いして1人で映画を鑑賞していました。
その映画は「人生とは心の在り方だ」というセリフと共に終わっていくのです。
心の解放
スティーブンは順調に回復して、無事退院することができました。
そして、スティーブンは大学に入学することが決まった、とヒラリーに報告し、「君が自分で掴み取れと背中を押してくれたからだ」と言います。
スティーブンの母は「いろいろな経験をして人生を知ったからだ」と言っていましたが、彼自身もヒラリーとの出会いを通して変わっていたのでした。
旅立ちを迎えた朝、ヒラリーは物寂しそうに本を渡します。
最初は「寂しいから早く行って」と言いますが、抑えきれずに追いかけスティーブンを抱きしめました。
スティーブンは列車の中でヒラリーから渡された本を読むと、新しい人生の出発を思わせるような言葉が綴られていました。



ここで物語は終わります。
本作品で語るべきテーマとしては、「人生とは心の在り方」というヒラリーが観た映画のセリフでしょう。
人生を生きていく上で、心に闇を抱えるヒラリーにとって、とても救われる言葉だったのではないでしょうか?
かつてヒラリーが劇場に復帰したとき、スティーブンにこんな話をしました。
「昔、父親と釣りに行ったけど、全く釣れなかった。釣れなかった原因は、釣れる場所を人に聞けなかったこと。恥は心を蝕む」
すなわち、ヒラリーは塞ぎ込んでおり、そのことが自分自身を追い込んでしまっていたのです。
しかし、自分の恥など考えずに、願望のままに生きることが人生を豊かにさせる大きなヒントなのだということでしょう。
社交ダンスで一緒に踊る仲間がいなかったけど、自分から誘えなかったこと
映画館で映画を観てみたかったけど、観れなかったこと
スティーブンに会いたかったけど、会いに行けなかったこと
というように、自分の心を解放させることができず、常に自分の中に溜め込んで生きてきたのです。
しかし、スティーブンは常にヒラリーを思いやり、彼女の心に寄り添い続けていました。
黒人であるだけで虐げられても、自分の夢を追いかけ、ありのまま生きています。
ヒラリーは、スティーブンに「自分の望む人生は自分で掴み取るもの」と言っていましたね。
生きていく上でどんな困難に見舞われても、信念を持った自分の心が折れなければ、必ずいつでも前を向けるということなのではないでしょうか?
最後にヒラリーがスティーブンを追いかけて抱きしめた姿は、これまで彼女が抑えていた気持ちを解放できた瞬間だったのです。
そうして自身の心を解放したヒラリーと一度諦めた夢に向かって走り出したスティーブンのもとには、きっと新しい芽が咲くのでしょう。
各レビューサイトでの評価


本作品の世間の反応や評価について紹介します。
それぞれ点数と主なレビューを3件ずつ紹介していますので、気になる方はぜひリンク先をチェックしてみてください!
Filmarksの使い方については以下の記事を参考になります。
Filmarks
・所々にいい言葉がある作品だった
・映画館で観るべき美しい映画
・優しい気持ちになれた
Filmarks:『エンパイア・オブ・ライト』映画情報・感想・評価ページ(https://filmarks.com/movies/100779)
IMDb
・これ以上必要のないくらい、優れた演技、演出、物語であった
・やはりオリヴィア・コールマンの狂気じみた演技は素晴らしい
・みんなそれぞれ傷を負っている、それがとても良い要素の一つである
IMDb 『Empire of Light』(https://www.imdb.com/title/tt14402146/)
Rotten Tomatoes
・複雑で壮大な映画であり、素晴らしいパフォーマンス
・物語は悲痛でありながら美しいものであった
・私たちが直面している現代の課題を取り上げている素晴らしい作品
Rotten Tomates 『Empire of Light』 (https://www.rottentomatoes.com/m/another_round)


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本作品で監督を務めたサム・メンデスは、実はとんでもない監督なんです。



どういうこと??
サム・メンデス監督は1999年に映画監督デビューしたのですが、そのデビュー作でいきなりアカデミー賞作品賞を含む5部門を受賞しています。



すごいですよね・・・
その他にも多くの作品がアカデミー賞やその他の賞を受賞しており、本作品もアカデミー賞で候補視されていました。
惜しくも受賞とはなりませんでしたが、それだけ評価の高い映画監督であり、そんなサム・メンデス監督の作品はおすすめなものばかりです!
このパートでは、サム・メンデス監督の作品からおすすめの2作品を紹介します。
気になる方はぜひ観てみてください!
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アメリカン・ビューティー(1999年)


映画『アメリカン・ビューティー』は、2000年に公開されたアメリカのドラマ映画です。
主人公の中年男性は家族との関係や仕事に疲れ果て、日々の生活に嫌気がさしていましたが、娘の友達に一目惚れしたことにより人生が一変していくという内容になっています。
現代社会が抱える問題や、人生の意味を考えさせられる本作品への評価は非常に高く、2000年第72回アカデミー賞では、作品賞、脚本賞、監督賞、主演男優賞、撮影賞の5部門を受賞しました。
主演を務めるのは、『ユージュアル・サスペクツ』や『セブン』に出演しているケヴィン・スペイシーです。
1917 命をかけた伝令(2019年)


映画『1917 命をかけた伝令』は、2020年に公開されたイギリスの戦争映画です。
第一次世界大戦真っ只中の1917年、イギリス軍の連隊に重要な情報を届けるために、2人の兵士が命をかけて進んでいく姿を描いています。
本作品はワンカットで撮影されているため、最初から最後まで繋がっているかのような緊迫した内容に大きな評価が集まり、2020年第90回アカデミー賞では、作品賞を含む10部門にノミネートされ、撮影賞、音響賞、視覚効果賞の3部門を見事に受賞しました。
本作品はイギリス側から描かれておりますが、反対のドイツ側からも同じ西部戦線の戦いを描いた作品である『西部戦線異状なし』もとてもおすすめです!
まとめ
この記事では、映画『エンパイア・オブ・ライト』の概要・あらすじを紹介するとともに、5つのポイントからネタバレ解説を行いました。
- ヒラリーは過去のトラウマから自分を塞ぎ込んでいた
- スティーブンの優しい姿に惹かれていった
- 過去のトラウマが蘇り、ヒラリーは自分を制御できなくなってしまった
- スティーブンは暴動に巻き込まれ、意識を失う重傷を負ってしまった
- 「人生は心の在り方」という考えに出会い、ヒラリーは自らの心を解放させていった
過去のトラウマなどが原因で、自分自身を塞ぎ込んでいる人は決して少なくありません。
「どうせ期待するくらいなら・・・」といろいろなことに諦めてしまっている人は、なかなか自分の気持ちに正直になれないものです。
そういう人にとっては、自分を変えることは非常に難しいことなのでしょう。
しかし、人との出会い、映画のような素敵な体験との出会いなどによって買われる瞬間は必ず訪れます。
その瞬間を自ら掴み取ることができるのか?
そんなことを感じさせてくれる作品ですね。

