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asa(あさ)
映画が大好きな28歳会社員

年間300本程度の映画作品(洋画がほとんど)を鑑賞している映画好きです◎

アカデミー賞で輝く俳優・女優の姿に感動し、アカデミー賞などの映画賞をもとに映画の魅力を発信しています。

映画『コーダ あいのうた』レビュー・解説(ネタバレ考察) 2022年アカデミー賞作品賞受賞作品!

映画『コーダ あいのうた』は見ましたか?

2022年のアカデミー賞作品賞に輝いた作品で、障がいを持つ家族と向き合いながらも自らの夢を追いかける姿に多くの人が涙をしました。

今回の記事では、映画『コーダ あいのうた』のあらすじ・レビュー・解説を紹介するとともに

  • 聾唖者の世界はどんなものであったのか
  • ルビーにとっての夢とは
  • 自分たちとは違う娘への愛とは

などをポイントに考察をしてきます。

本作品をすでに見た人も、まだ見ていない人にもより作品を深く知るきっかけになったら幸いです。

また、当日のアカデミー賞についても解説していますので、そちらもぜひチェックしてみてください!

それではいきましょう!

目次

概要


出典:映画『Coda あいのうた』公式サイト(https://gaga.ne.jp/coda/)

2022年にアカデミー賞作品賞を受賞した作品です。
フランスの映画『エール!』という作品のリメイクとして制作されました。

「コーダ」と呼ばれる、聾唖者の親を持つが、自らは耳が聞こえる子どもに焦点をあて、家族との関係や自分のやりたいことへの葛藤を抱えた少女の夢を追いかける姿が感動的に描かれています。

実際に耳が聞こえない俳優を起用するなど、リアリティを求めた本作品は、世界中に感動と希望を届け、多くの識者からも絶賛されました。

私も感動して、涙しました

昨今、NetflixやAmazonプライムなどの配信サービスが注目を集めていますが、本作品の配給権はApple TV+が獲得し、配信サービス初のアカデミー賞作品賞受賞となり、快挙を成し遂げた作品でもあります。

監督:シアン・へダー
出演:エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァー、ダニエル・デュラント、マーリー・マトリン
時間:111分
配給:Apple TV+
制作:アメリカ、フランス、カナダ
ジャンル:ドラマ/音楽

予告動画

あらすじ

アメリカ、マサチューセッツ州グロスター

家族全員の中で唯一耳が聞こえる女子高生のルビーは、家族の通訳として漁師である父や兄の仕事を手伝っていた

ルビーは音楽が好きだが、耳の聞こえない家族の手伝いを優先し、自分の本当にやりたいことをできないでいたが、学校で所属した合唱サークルで、ルビーは才能を見出され、歌うことの楽しさにどんどんのめり込んでいく

耳が聞こえない家族は、ルビーの歌声を聴くことができないことと通訳としてのサポートを失うことへの葛藤を抱え、なかなかルビーの活動を受け入れることができないでいた

ルビーは自らの未来を切り開いていくために、家族や歌と正面から向き合っていく

レビュー・解説(ネタバレあり)

それでは、本作品のレビュー・解説にいきましょう!

改めて本作品のポイントは以下のとおりです。

  • 聾唖者の世界はどんなものであったのか
  • ルビーにとっての夢とは
  • 自分たちとは違う娘への愛とは

それぞれ詳細に解説していますので、ぜひ参考にしてみてください!

※ここからはネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。

①「コーダ」とは?

コーダとは、聾唖者(耳が聞こえない人)の親のもとで育った子どものことを言います。

両親でも片方の親だけの場合でも、その子どもは「コーダ」と呼ばれます。

日本だけでも約2万人のコーダが存在していると言われており、その環境により全く悩みなどは異なるのでしょう。

例えば

・日常における手話と会話の混在
・親の通訳としての役割

など本作品中にも見られたようなものがあります。

私たちは、それを決して憐れむのではなく、まずはこのような映画作品を通して知ることが最も大事だと思います。

②狭い世界と広い世界

ルビーの家族(特に両親)は非常に幸せそうな生活を送っています。

愛し合う度が過ぎてしまい、医者に止められてしまうほどです。

側から見ると「大変そうだな」と思ってしまうこともありますが、至って本人たちは“普通”に生きています。

これまでの困難を乗り越え、耳の聞こえない生活に慣れたのだと思いますが、今の生活に十分に満足しているのでしょう。

周りが憐れんでも、そんなことはお構いなしです。
なんと言ったって、本人たちは幸せでたまらないのですから。

外と通じてくれる娘ルビーの存在があり、生きていく上では大きな支障はないわけですから、その生活を変えようとは思いません。

言い換えると、狭い世界で生きていくことを覚悟しています。

狭いからこそ、決して外野が邪魔のできない“かけがえのなさ”が存在しています。

だからこそ、その生活を脅かすこと(=娘が家から離れること)を極度に恐れ、なかなか認めてあげることができませんでした。

その狭い世界にいる家族に対して、ルビーは支えてあげたい気持ちを持ちながら、いつしか負担となってしまっています。

③狭い世界に手を差し伸べたのは、自らの可能性だった

家族には言えず、密かに歌への思いを寄せていたルビーですが、その気持ちを解放させるにはいくつもの葛藤が存在していました。

大人になっていく中で培っていく自信は、主には幼少期の親から与えられた愛情などがもとになっていることが多いのですが、自身の歌声をちゃんと褒めてもらったことのないルビーはもちろん歌への自信はありません。

それでも合唱サークルに所属し、顧問のヴィラロボス先生から才能を見出され、瞬く間に音楽にのめり込んでいくことになります。
歌うことで、今まで押し殺してきた感情を表現させた先生は本当に素敵な存在ですよね。

単純に見れば、「顧問の先生との出会いで人生が変わった」と捉えることができますが、ルビーの半生を見るとそんな簡単な話ではないように思いました。

自分の夢を誰かに認められたいのは誰しも思うことですが、ルビーにとって最も上位に位置するのは家族です。

自らの才能を認めてくれる顧問と出会い、必死に努力を重ねていきますが、最大の努力は狭い世界にいる家族を自らの可能性で広い世界に誘うことでした。

④“自分たちとは違う”娘への愛

自身の将来の夢を語り、なんとか家族に認められようと思いますが、やはり家族は認めてくれません。

ルビーは“わかってくれないんだ”と家族との距離を感じ、塞ぎ込んでしまいます。

しかし、そこには母親なりの深い愛情がありました。

音楽の道に進むことに対しては「母親として娘の良さをわかってあげられない」と言い、
健常者として生まれることに対しては「自分が育ててあげられるか心配」と言いました。

母親は、自身が狭い世界にいたからこそ、想像以上にルビーの生きる世界が広く見えていたのかもしれません。

娘が広い世界に行くことへの恐怖ではなく、娘に何かあった時に自分が守ってあげられないことへの恐怖でした。

それを知ったルビーは、家族とは違う自分だからこそ、家族のかけがえのなさと尊さを力に変えることができるのだと決心しました。

そうして、ルビーの歌を聞いたことのない家族は懐疑的な気持ちでコンサートに参加しますが、やはりルビーの歌声は聞こえません。

それでも周りはスタンディングオベーションです。

娘が広い世界に認められる瞬間を垣間見ました。

父親はその夜、ルビーに「俺のために歌ってくれ」と頼み、初めてルビーの夢を認めるとともに、広い世界そのものを認めることができました。

このシーンは本当に感動的でしたね

今までは、自分たちとは違うからこそ自分たちのために生きていくこと(狭い世界)を望んでいた家族でしたが、最後には自分たちとは違うからこそ自らの道(広い世界)を進んで欲しいと願うのでした。

2022年アカデミー賞作品賞受賞!

2022年第94回アカデミー賞で、見事作品賞を含む3部門を受賞しました!

受賞部門

  • 作品賞
  • 助演男優賞
  • 脚色賞

事前予想では劣勢だった?

本作品は、アカデミー賞において有力候補でありながらも「大本命」とまではいかないような状態でした。

ゴールデングローブ賞で作品賞を受賞した『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は、その年の映画賞を総なめし、いわゆる「大本命」と呼ばれていました。

また、Netflixオリジナル作品として、初の作品賞受賞がかかっていたので、余計に注目度は高くなっていましたね。

他には、私たち日本人は希望を抱かずにはいられなかった『ドライブ・マイ・カー』ですね!
日本の作品として初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされ、その快挙まであとわずかのところまで迫っていました。

その他には、北アイルランドの紛争を描いた『ベルファスト』も非常に有力でした。
トロント国際映画祭で最高賞を受賞し、テーマがテーマだけに、アカデミー賞でも有利に進むことが考えられていました。

それらの中では比較的劣勢でしたが、そんな前評判を跳ね除け、『コーダ あいのうた』が見事受賞する結果となりましたね!

いくつかの珍しい出来事

2022年第94回アカデミー賞は珍しいいくつかの出来事がありました。

作品賞と監督賞で別の作品が受賞する

アカデミー賞では、作品賞と監督賞がセットで捉えられることが多く、作品賞と監督賞の受賞作品は同じ作品であることが多いです。

ノミネートされながらも惜しくもどちらか片方しか受賞しなかった作品もいくつか存在するのですが、『コーダ あいのうた』は監督賞にノミネートすらされませんでした。

作品賞を受賞しながらも、監督賞にノミネートをされなかった作品は、アカデミー賞95年の歴史でわずか6作品のみです。

最近の作品では、2019年の『グリーンブック』が同様の結果となっています。

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配信サービスから初めての作品賞受賞!

本作品の配給権はApple TV+が持っています。

配信サービスを行なっている会社が配給権を持ち、その作品がアカデミー賞作品賞を受賞するのは初めてのことであり、快挙といえます。

先述の通り、Netflixオリジナル作品の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が最有力でありましたから、その快挙を逃したNetflixとしては非常に悔しい思いをしたのは言うまでもないでしょう。

2023年のアカデミー賞でもNetflix作品は有力な候補作品を輩出しています。

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まとめ

今回は、映画『コーダ』について、レビュー・解説を紹介しました。

ポイントをまとめると

  • 聾唖者は、狭い世界での生活に満足していた
  • ルビーにとっての夢は、家族を広い世界に誘うものでもあった
  • 自分たちと違うからこそ、最後には娘が広い世界に行くことを望んだ

というようになります。

自分のしたいことがある時、親を納得させるのに苦労する人は一定数いますよね。
中にはそれで仲が壊れてしまう人もいるのでしょう。

本作品では、さらに家族の障がいがあってのことでしたから、なおさらその葛藤は凄まじいものでした。

しかし、ルビーとルビーの家族は違いましたね。

ルビーの可能性と家族のかけがえのない絆で狭い世界を抜け出し、新しい世界に飛び出すことができました。

本記事では、「狭い世界」という表現を繰り返しており、マイナスな表現であることに変わりありません。
しかし、その狭い世界にはかけがえのない絆が存在しており、だからこそルビーの可能性が光り輝いたのです。

「お互いに助け合いながら生きていく」

これは誰しもの人生の共通のテーマですが、その助け合い方は人それぞれです。

その一つの素晴らしい物語を本作品は示してくれましたね。

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