Netflixオリジナル短編映画『隔たる世界の2人』は観ましたか?
2021年アカデミー賞で短編実写映画賞を受賞した作品で、2020年にアメリカで発生した事件を元に描かれています。
なんか有名な事件だよね?
暴動が起こっているニュース見た!
まさにその事件!!
人種差別にも大きく関わる作品だよ
この記事では、Netflixオリジナル短編映画『隔たる世界の2人』の概要・あらすじを紹介するとともに、内容に詳しく触れながらネタバレ解説を行なっています。
※ネタバレを含みますので、ご注意ください。
それでは、いってみましょう!
Netflixオリジナル短編映画『隔たる世界の2人』 概要
Netflixオリジナル短編映画『隔たる世界の2人』 は2020年に製作され、2021年にNetflixで公開された短編映画です。
2020年にアメリカで実際に起こったジョージ・フロイドと言う男性が警察官に殺されてしまった事件を元に制作されており、全世界で大きな話題となりました。
2021年第93回アカデミー賞では短編実写映画賞を受賞しました。
主人公がタイムリープを繰り返す、というSF要素をメインに据えながらも強いメッセージを持っている本作品を見ることで、アメリカの人種差別に対する問題についても深く知るきっかけになります。
監督 | トレイボン・フリー マーティン・デズモンド・ロー |
出演 | ジョーイ・バッドアス アンドリュー・ハワード ザリア |
時間 | 29分 |
ジャンル | 短編/ショートフィルム |
制作 | アメリカ |
予告動画
あらすじ
ニューヨークでグラフィックデザイナーをしていたカーターは女性のベッドで目が覚める
飼っている犬に餌を与えるために自宅に帰ろうとする道中で警察官にイチャモンをつけられ、殺されてしまう
殺されたところで再び女性のベッドで目が覚め、同じ1日が再び始まるが、やはり警察に殺されてしまう
カーターは生き延びるためにあらゆる手を尽くしてくのだった
Netflixオリジナル短編映画『隔たる世界の2人』 ネタバレ解説
このパートでは、Netflixオリジナル短編映画『隔たる世界の2人』のネタバレ解説を行います。
作品時間は29分と短い時間ですが、非常に考えさせられる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
※ネタバレを含みますので、ご注意ください。
知っておきたい「ジョージ・フロイドの死」
まず、本作品を解説する前に触れておきたいのが、「ジョージ・フロイドの死」です。
本作品の題材ともなった大事件ですが、こちらは2020年のアメリカのミネソタ州ミネアポリスで起こりました。
アフリカ系の黒人男性であるジョージ・フロイドが偽札の使用により逮捕された際に、警察の過剰な取り押さえが原因で窒息死させられる事態になってしまいました。
これが大きな問題になり、警察署が放火されるほどのデモが発生し、何名もの市民が二次的な被害を受けています。
なぜ、ここまで大問題に発展したかというと、警察の過剰な取り押さえにより亡くなってしまったことも大きな問題ですが、それ以上にアメリカの人種差別の根深さに問題があります。
アメリカの歴史では、白人の警察官が黒人ということだけを理由に過剰に取り締まり、いわれのない罪を着せられてきた人も多い存在してきました。
黒人というだけでさまざまな制限を受け、あらゆる場面で差別を受けてきました。
その差別を警察が公権力を使って行うわけですから、黒人には人権がないといっても過言ではありません。
時代も変わっていき、黒人の人々も普通な生活を送れるようになりつつあったからこそ、この事件をただやり過ごすわけにはいかなかったのです。
ここで起こったデモは、黒人の人々の人権を守り抜くための決死な闘いなのでした。
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何度も殺されることが表すのは
本作品で主人公のカーターはタイムリープを繰り返し、何度も白人の警察官に殺されてしまいます。
その殺され方は毎回異なり、どんだけ避けようとしても必ず殺されてしまうのです。
このことが表しているのは、「結局、黒人であるだけで何をしたって無駄」ということではないでしょうか?
これまでの歴史上、人種差別に対して声を上げる勇敢な人々は、どの時代にも存在していました。
公民権運動の指導者としてノーベル平和賞を受賞したキング牧師は、この例の有名な一人です。
このような人々の努力があったからこそ、人差別に対する捉え方が時代とともに変化してきています。
それでもジョージ・フロイドのような事件が起きています。
このカーターが行っていたタイムリープは、これまでの歴史でどれだけ時代を変えようと動いたとしても、根本の部分は変わらないことに対する強烈なアンチテーゼになっているのです。
誰であっても守られなければならない
何度も死んでいく中でコツを掴んだカーターは警察官に自分のタイムリープ現象を信じ込ませることにしました。
最初は訝しげにしていた警察官も次第に信じ込むようになり、「どうすれば死ななくて済むんだ?」とカーターに聞きます。
カーターは「家まで送り届けてほしい」と言うのでした。
パトカーに乗り込み、自宅まで送り届けてもらう中で二人の関係は急速に縮まっていきます。
これが表しているのは、「身の安全は誰かに守られなければならない」ということです。
よく「自分の身は自分で守れ」なんていう言葉がありますが、世の中には守りきれない人も存在しています。
それが本作品ではカーターという黒人であり、どれだけ避けようとしても死は避けられないので、警察官に守ってもらうことを選択しました。
本来、警察官は街の安全を守ために存在しているので、至極当たり前のことですよね。
そして、何事もなく無事自宅に到着するのですが、黒人にとって生き抜くことはもはや無理だろうと感じさせることが起こります。
一生闘っていく宿命を背負った人たち
無事に自宅に送り届けてもらったカーターでしたが、ここで事態が急変します。
警察官は拍手しながら、「最高だったよ!」と高らかに笑うのでした。
カーターの一連の行動を「演技」と言い、何回もループして自分から逃れようとしてきたんだろうと言うのです。
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こうなりますよね。
何と警察官はカーターがループしていることを知っており、自分を騙して逃げようとしていると思っていました。
そのカーターの演技に乗ってあげることで、カーターを試していたのです。
そして逃げようとしていると思った警察官は拳銃でカーターを殺しました。
これは、SF的な、映画的なカラクリが何かあるわけではなく、単純に「結局、黒人であるだけで何をしたって無駄」ということを示しているのです。
最後の最後に嫌な形で本作品の主題が回収されてしまいました。
何度も殺されて、何度も生き抜くために試行錯誤して、ついには警察に守ってもらうことを選択してもなお、最終的には殺されてしまうのです。
最後のシーン、カーターは再び同じ1日を過ごすことになるのですが、「何度でも繰り返して、犬が待っている家に絶対に帰る!」と決意して、1日をスタートさせました。
もう何をしても変わらない、それであるならば何度でも諦めずに立ち向かい続けるしかない、という強いメッセージですね。
まさに、これまでの歴史を象徴するように、何度声を上げて歴史を変えようとしても変わりきらなかった今の世界を映しているのかもしれません。
各レビューサイトでの評価
本作品の世間の反応について紹介します。
それぞれ点数と主なレビューを3件ずつ紹介していますので、気になる方はぜひリンク先をチェックしてみてください!
Filmarksの使い方については以下の記事を参考になります。
Filmarks
・戦いはこれからも続いていくことことを感じさせる
・黒人で生まれる怖さを改めて実感した
・今の世界はここまで直接的に訴えなければならないのか
Filmarks:『隔たる世界の二人』映画情報・感想・評価ページ(https://filmarks.com/movies/96288)
IMDb
・ハッピーエンドを望むが、人生はそういうものではない
・不安、怒り、悲しみを同時に感じずにはいられない
・殺される理由は肌の色だけなのに・・・
IMDb 『Two Distant Strangers』(https://www.imdb.com/title/tt13472984/)
Rotten Tomatoes
・アカデミー賞にノミネートされたどの長編作品よりも心に残った
・これは決して新しいことではないのに、緊急性は高まっている
・できるだけ多くの人に見られるべき作品
Rotten Tomatoes『Two Distant Strangers』(https://www.rottentomatoes.com/m/two_distant_strangers)
2021年第93回アカデミー賞
本作品は、2021年第93回アカデミー賞にて、短編実写映画賞を受賞しました!
Netflixオリジナル作品として、初めての短編実写映画賞を受賞し、また人種差別の問題を世界中に届けるきっかけを生んでいます。
受賞した際の壇上スピーチにて、本作品の監督は「人間における最も卑劣なことは、人の痛みに関心がないことだ」と言いました。
果たして、人の痛みとは何なのでしょうか?
悪口を言うこと、暴力を振るうこと、さまざまありますよね。
そのどれをとっても、自分に同じことが降りかかる未来を想像する人は多くはないのかもしれません。
人の痛み=自分の痛み
このことをわかっていたら、ほんのわずか未来が変わるのだと言いたかったのではないでしょうか?
同年に短編実写映画賞にノミネートされた『フィーリング スルー』も傑作ですので、ぜひチェックしてみてください!
まとめ
この記事では、Netflixオリジナル短編映画『隔たる世界の2人』の概要、あらすじを紹介し、ネタバレ解説を行いました。
- 何度タイムリープしても殺されてしまう→黒人であるだけで何をしても殺されてしまう運命だという人種差別への強烈なアンチテーゼである
- 黒人は自分で自分の身を守ことはできない環境を強いられてきた
- それでも誰にも守ってもらえないから、自分で闘っていくしかない
2020年、ごくごく最近の話です。
本作品を観た人の中で、事件が起こった当時にそのことを調べて何か動いた人はどれくらいいたのでしょうか?
私は無関係だと思って傍観していました
今さらながら情けなく思います
実際に日本に住んでいる私たちが何かできることがあるかと言われれば、そんなことはないのかもしれません。
しかし、知ることはできます。
本作品の監督を務めたお二人は「人の痛みに無関心であることは卑劣だ」と言いました。
歴史を知り、最新ニュースを知り、人の痛みを知ることが、再び同じような悲劇を生まないための近道になると信じ続けましょう。