【2023年アカデミー賞直前SP】受賞作品は誰が決める?投票員と投票方法を解説!
2023年第95回アカデミー賞がいよいよ迫ってきましたね!
もしかすると日本人のみなさまは、ニュースで見る程度でなかなかその全貌を知らない人も多いのではないでしょうか?
そもそも日本ではテレビ放映はなく、WOWWOWで放映されるので、登録していない人は見られないという仕方ない面もありますね。
そんな中、こんな疑問を抱いたことはありませんか?
アカデミー賞ってどうやって決まるの??

私も同じことを思っていました。
しかし!アカデミー賞は、誰が、いつ、どうやって決めるのか?を知ることで、アカデミー賞が何倍にも面白くなります!
この記事では、その「誰が」「いつ」「どうやって」の部分を徹底的に解説しています。
この記事を読んで、アカデミー賞をより楽しめるきっかけにしてもらえたら幸いです。
それでは、いってみましょう!
- アカデミー賞の決め方を知りたい!
- アカデミー賞をより深く楽しみたい!
- 映画に詳しくなりたい!
その前に、まずは2023年のノミネート作品をチェック!


アカデミー賞は誰が決めるの??


アカデミー賞って誰が決めているの?
こんな疑問を抱いた方も少なくないはずです。
審査員がいるのかな?いるとしたら誰が審査員なんだろう、、
何人くらいで決めているのかな?などなど、、、
毎年何となくニュースで見たりするけど、実際のところ、深く考えたことないという人もいるのではないでしょうか?
このパートでは、そんな疑問を解消します!
投票するのはアカデミー協会員
アカデミー協会員とは、すなわちアカデミー賞を主催する団体である映画芸術科学アカデミー(通称:AMPAS)の会員のことを指します。
アカデミー賞授賞式は一般の方が会場で見れる、ということはなく、出演者・スタッフ、そしてこのアカデミー協会員が参加することができる場となっています。
アカデミー協会員は現在、約9500名もいると言われており、その人数は年々増加しています。



2006年は約5800名だったので、すごい増加率!
こちらの理由については後ほど詳しく説明しますが、投票する人数が増えていっているということになりますね。
アカデミー協会員になる人はどんな人?
では、そんなアカデミー協会員はどんな人々で構成されているのかというと、一言でいうと映画関係者です。
映画監督、俳優、脚本家、プロデューサーなどなど、、カテゴリに分けると17種類!
現在でも第一線で活躍している人もいれば、すでに引退している人なども含まれています。
この協会員の内訳でいうと、俳優が最も多くを占めており、割合としては約15%が俳優となっています。
このように「プロがプロを評価する」のがアカデミー賞の大きな特徴の一つとなっていますね。
ただ、協会員全員が全部門に投票するのではなく、俳優部門は俳優協会員が投票するという、完全に同業のプロ目線の仕様といった感じでしょうか?



信頼性が高いですね!
毎年新しく協会員として招待される人たちもまた映画関係者であり、アカデミー賞をはじめとしたさまざまな映画シーンで活躍した人が招待されています。
なりたい人が協会員になれるの?
果たして、映画関係者であれば誰でもアカデミー協会になれるのでしょうか?
答えはノーです。
2名以上のアカデミー協会員の推薦により招待された人が協会員になれる資格を持つのですが、AMPASは、その推薦の規定をそれぞれ職業によって定めています。
- 劇場公開された3作品以上の長編映画にクレジットがあり、また、脚本にある役であり、そのうち1作品は過去5年間に公開された作品であること
- 過去にアカデミー賞演技部門(主演男優・女優賞、助演男優・女優賞)にノミネートされた経験があること
- 俳優として他に類を見ない功績を成し遂げた、また傑出した貢献をしたこと
このようにそれぞれの部門で定められているため、毎年厳選なる審査が行われた上で選ばれた精鋭たちが集まった格式高い団体となっているわけです。
協会員となるだけでとてつもない栄誉のように感じられますよね。
ちなみに招待すべき協会員候補を検討するのは、毎年一度のみ春に行われています。
アカデミー協会員の資格は10年と定められていますが、更新を行うことができ、3回更新することで終身会員となります。
昨今、協会員が増加!その深い理由とは
先述の通り、年々アカデミー協会員が増加しています。
そして、単純に人数が増えているだけでなく、その構成要素にも大きな変化がありました。
それは人種です。
少し時を遡ってみましょう。
2015年、2016年に行われたアカデミー賞において、ノミネートされた俳優・女優が全て白人で大きな批難を浴びました。
これが俗に言う「Oscar So White(オスカーソーホワイト)」と呼ばれる出来事です。
実は、アカデミー協会員は、蓋を開けるとほとんどが60代以上の白人男性という、投票が偏っても仕方がないような構成になっていたんです。
この批判を受け、AMPASは積極的に人種や性別に垣根なく協会員として招待し、それが昨今の協会員増加に繋がっているわけですね。
現在、AMPASが運営するアカデミー賞公式サイトでは、「グローバルな組織であり、世界中の国々にメンバーがいます」と記載しています。
さっそく効果が出たのか、2017年のアカデミー賞では、助演男優・女優賞ともに黒人の方が受賞する結果となりました。
それ以降も定期的に白人以外の人種の方が受賞し、2020年第95回は韓国映画の『パラサイト 半地下の家族』が受賞するという快挙もありましたね!
日本人の協会員も存在する?
時代の流れも受けて、日本人の協会員も増加しています!
主な日本人の協会員はこんなラインナップです。
- 北野武(映画監督)
- 是枝裕和(映画監督)
- 仲代達矢(俳優)
- 細田守(映画監督)
- 新海誠(映画監督)
- 園子温(映画監督)
- 菊地凛子(俳優)
- 真田広之(俳優)



知っている方が多いですよね!
こうやって映画界で活躍した日本人にも招待が届き、協会員となる人が増えています。
そして、昨年の2022年に国際長編映画賞を受賞し、日本映画で初めて作品賞にもノミネートされた『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督、そして主演の西島秀俊さんにも協会員の招待が届きました。


気になる投票方法


「誰が」決めているのかがわかったら、次はこの疑問を抱きますよね。
アカデミー賞ってどうやって決めているの?
アカデミー協会員が投票する、ということを説明しましたが、具体的な投票方法はどんな感じなんだろう?と気になる人も多いと思うので、このパートでは投票方法やその要件について解説します!
そもそも投票できる作品は限られている!
ます初めに知っておかなければならないのが、アカデミー賞対象作品の要件です。
なんでもかんでもアカデミー賞を受賞できるわけではないんです!
対象作品にも決まりがあります。
- 40分以上の長編作品で、なおかつ有料であること
- ロサンゼルス郡内の映画館で連続7日間以上映されており、少なくとも一日3回上映されていること
- 映画館で公開される前にテレビ放送、ネット配信、ビデオ発売などで公開されていないこと
これらをクリアしないとアカデミー賞の対象にすらならないので、アカデミー賞を狙っている作品はこの要件を満たす作品を製作しています。
ちなみに、過去にコロナの影響もあり、年によってはこの限りでないこともありました。
投票は各部門ごとに投票できる協会員が限られている
「アカデミー協会員になる人はどんな人?」というパートで少し触れましたが、アカデミー賞の投票において、各部門ごとに投票できる協会員は限られています。
例えば、演技賞(主演俳優・女優賞、助演男優・女優賞)では、俳優の協会員のみが投票できることになっています。
協会員は17種類ものカテゴリーに分けられているので、まさにその道のプロが投票する形式となっているわけですね。
一部、国際長編映画賞や長編アニメーション映画賞にはそれぞれ規定がありますが、基本的には上記のような仕組みを採用しており、一人が1部門1作品を選んで投票します。
投票はいつからいつまで?
アカデミー賞では、毎年1月下旬にノミネート作品が発表され、それ以降に投票がスタートします。
その期間はわずか1週間ほどで、2月下旬ごろに行われます。



思ったり短いですよね
また、現在はオンラインでの投票を行っており、ノミネート作品と受賞作品ともにオンライン投票によって決まっています。
投票の集計はAMPASが行っているのではなく、大手会計事務所のウォーターハウスクーパース(PwC)によって実施されています。
あ、外部の業者がやるんだ?と思いませんか?
過去にAMPASが行なっていた際に、一部新聞社が抜け駆けで報道してしまったため現在の形式となりました。
PwCで厳重に保管されているため、一部を除き、ほぼ全員が当日まで結果を知らないことになります。
作品賞だけ全く投票方法が違う!
先述した通り、基本的には各部門で投票できる協会員は限られているのですが、作品賞は異なります。
作品賞は、協会員全員が投票可能で、さらに全ノミネート作品を1位〜10位まで順位をつけて投票します。
そのため、必ずしも1位に選ばれた数が多い作品が作品賞を受賞するのではなく、言わば平均点が高い作品が受賞することになります。



ちょっと不思議な感じもしますよね。
そのため、突出して評価の高い作品があれば話は別ですが、基本的には混戦となることが多くなります。
そして、最終的には万人にとってそれなりに評価が高い作品が受賞し、意外と本命と言われていた作品が逃したりもしてきました。
近年で言うと、『ラ・ラ・ランド』(2017年/第89回)や『スリー・ビルボード』(2018年/第90回)、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2022年/第94回)がその最たる例です。
「ある人にとっては1位たけど、ある人にとっては10位の作品」より「みんなが2〜3位にする作品」の方が受賞しやすいので、結局のところは素晴らしい作品が受賞することになりますね!
歴代の作品賞を受賞した作品のおすすめを知りたい人は以下の記事をチェック!


歴史を変えた『ダークナイト』
先ほど作品賞だけ投票方法が違うことを解説しました。
しかし、作品賞には他の部門ともう一つ異なる点があります。
それがノミネート数です。
他の部門が5作品のノミネートに対して、作品賞のみ10作品のノミネートとなっています。
やっぱり一番栄誉ある賞だから?
こう思う方もいると思いますが、実際には過去の作品が大きく関わっていると言われています。
『ダークナイト 』/クリストファー・ノーラン(2008年)


この作品は、アメコミヒーローものである『バットマン』を非常にシリアスに描いた3部作の2作目なのですが、驚くべき大ヒットを記録しました。
アカデミー賞では、8部門ノミネートされ、2部門(助演男優賞・音響編集賞)の受賞となりました。
しかし、「なぜ作品賞にノミネートされないのだ!」という議論が巻き起こり、より多くの作品にチャンスを与えるべきだという経緯があり、作品賞のノミネート数が増えたと言われています。
ある作品がきっかけでアカデミー賞の歴史を変えるなんて、本当にすごいことですよね!
投票に影響を与える要素


各配給会社のロビー活動
ノミネート作品も、受賞作品もアカデミー協会員の投票によって決まるので、各配給会社は自社の作品に投票してもらうためにさまざまなロビー活動を行います。
例えば、莫大な予算をかけて映画雑誌などに広告を掲載したり、直接Blu-rayやストリーミングを送って見てもらうように仕向けたりしています。
アカデミー賞の対象となる作品は多いので、存在を知ってもらわなければ不利になってしまうわけですね。
アカデミー賞という栄誉のためであれば、配給会社が投資を惜しまないのは当然ではありますが、配給会社の規模によって有利不利が起こってしまっているという問題点も指摘されています。
2023年では、このことを背景にある問題も起こりました。
主演女優賞でノミネートされたアンドレア・ライスボローのロビー活動が違反であると指摘されたことです。
低予算で製作された「To Leslie」はPRに予算をかけられず、協会員に直接働きかけ、その協会員たちがSNSなどで彼女の演技を賞賛したことでノミネートまで駆け上がっています。
一時はノミネートの取り消しまで噂されましたが、結果として、ノミネートが取り消されることはありませんでした。
しかし、このことで配給会社の規模による機会の格差が問題視されることとなりました。
前哨戦の結果と出演者・スタッフの印象
アカデミー賞はその年度の最後に行われるのですが、そのことによりそれ以前の映画賞の影響を強く受けると言われています。
特に影響を受けると言われている前哨戦は4つあります。
- ゴールデングローブ賞
- 全米俳優組合賞(SAG)
- 英国アカデミー賞(BAFTA)
- クリティクス・チョイス・アワード
この4つの共通点としては、テレビ放映がなされる、という点になります。
作品に対する評価ももちろんのこと、その場での受賞コメントなども協会員の心を動かして有利に働くこともあると言われています。
多くのアカデミー賞ウォッチャーや予想屋の人たちは、これらを参考にしてアカデミー賞の予想を組み立てられていますね。
その他にも、一年間通してアカデミー賞以外の映画賞や映画祭が頻繁に行われており、その結果が影響を与えてきました。
世界の主要な映画賞や映画祭を知るには、下記の記事をチェック!


まとめ
今回の記事では、アカデミ賞受賞作品の決まり方について詳しく解説しました!
- アカデミー賞を決めるのは「アカデミー協会員」の投票
- 期間は2月下旬から1週間
- 各部門、その分野の協会員が投票する仕組み(一部例外あり)
- 作品賞は全員でランキング形式の投票を行う
- アカデミー賞を受賞するためにかく配給会社の熾烈なロビー活動が行われている
- 前哨戦の結果も非常に大きな影響を与える!
これらのことを知っておくだけで、アカデミー賞が何倍にも面白くなることは間違いなしです!
ぜひ、アカデミー賞を楽しんでくださいね!
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