映画『トップガン マーヴェリック』をご覧になりましたか?
大人気作品の約35年ぶりの続編で、主演はハリウッドの大スターのトム・クルーズが主演を務めたこともあり、世界中で大きな話題になりましたね!
それを踏まえて、映画ファンなら気になる話題があります。
2023年第95回アカデミー賞
このアカデミー賞で作品賞にもノミネートされていましたが、惜しくも音響賞のみの受賞となりました。
今回は、この『トップガン マーヴェリック』という作品が
なぜ、アカデミー賞作品賞を受賞できなかったのか?
という部分をポイントとして、徹底解説していきます。
すごく人気の作品なのに、なんでだろう・・・
実は、アカデミー賞には深い歴史があるんだよ
それでは、いってみましょう!
『トップガン マーヴェリック』について
1986年に公開された前作「トップガン」の続編作品で、前作とは監督、脚本家を変更し、新たな体制で制作された作品です。
公開とともに世界中で話題となり、興行収入は7億ドル(約922億円)を超え、全米歴代5位の記録(2023年3月現在)となっています。
コロナの影響や動画配信サービスの流行により、映画館の売上が減少している中でここまでの興行収入を叩き出し、あのスティーブン・スピルバーグ監督は、トム・クルーズに対して「映画界を救ったのは君だ!」と感謝したそうです。
予告動画
あらすじ
アメリカ海軍のパイロットであるマーヴェリックは、旧友のアイスマンからの要請で、再びノースアイランド海軍航空基地「トップガン」に教官として帰ってくることとなる
極秘ミッションを遂行すべく、「トップガン」の卒業生から選りすぐりのパイロットを招集するが、そこには過去の相棒グースの息子であるルースターがいた
「父親グースの死はマーヴェリックのせいだ」と敵対心を示すグースに対して、教官として受け止めながらもミッションの成功のための訓練を通してお互いに成長していく
見どころ
若さゆえに無鉄砲で大胆不敵だったマーヴェリックが大人になり、昔の自分のような若者に対して寄り添う姿には感慨深さを感じます。
さらには、チームとして仲違いも経験しながらも難易度の高いミッションを追いかけていく様子は、「チーム」や「仲間」というテーマにおいて、非常に心が動かされる内容になっています。
また、やはり戦闘機のシーンが主になっているため、非常に臨場感があります。
前作と比較するとその差は歴然としており、撮影のクオリティももちろんですが、スケールも桁違いになっています。
アカデミー賞においても、撮影部門でも受賞候補に挙がっているので、その点が保証された大迫力の映像で楽しめる作品となっています。
2023年第95回アカデミー賞について
2023年3月13日(日本時間)に第95回アカデミー賞授賞式が開催されました。
授賞式は、本作品のワンシーンを模した映像とともにスタートし、会場は大いに沸きました。
その中で、本作品は音響賞を受賞しています!
その他の結果は、以下の記事からご確認ください。
ノミネート部門
本作品は、作品賞を含む5部門にノミネートされていました。
- 作品賞
- 視覚効果賞
- 編集賞
- 音響賞
- 歌曲賞(主題歌賞)
主演男優賞や撮影賞にノミネートされなかったのはびっくりでした!
なぜ作品賞を受賞できなかったのか?
それでは、『トップガン マーヴェリック』が、なぜ作品賞を受賞できなかったのか?という点について具体的に考えていきましょう。
このことを考える上で、ポイントとなるのは以下の3つです。
- 作品賞と監督賞の関係
- 前哨戦の成績
- 続編作品に対する評価
それぞれ具体的に解説していきます。
ノミネートの段階で勝負は決まっていた!?
アカデミー賞は、作品賞とセットで考えられている賞があります。
それは監督賞です。
なぜセットで考えられているかと言うと、これは非常に単純なことであり、良い作品=良い監督であるという式が成り立つと考えられているからです。
例えば、美味しい料理は、それを作ったシェフがすごいことに間違いはありませんよね?
他にも、名画は描いた画家がすごく、芥川賞作品は執筆した小説家がすごい、などなど・・・
創作物にはこういった性質があるため、アカデミー賞においてもおのずとセットで捉えられてきました。
過去のアカデミー賞で作品賞を受賞した多くの作品が監督賞を受賞しており、約7割程度の作品が作品賞と監督賞を同時に受賞しています。
そして、作品賞を受賞したにも関わらず監督賞にノミネートすらされなかった作品は、過去95年の歴史でわずか6作品のみです。
その上で、本作品は作品賞にノミネートされながらも監督賞にはノミネートされておらず、アカデミー賞の歴史から考えて、本作品が作品賞を受賞するのは極めて困難な状況でした。
その他の候補作品が圧倒的に有利なデータ
作品賞にノミネートされた作品と、各作品のアカデミー賞に至るまでの成績を併せてご覧ください。
作品名 | 主な前哨戦の成績 |
---|---|
★エブリシング・エブリウェア・ オール・アット・ワンス | クリティクスチョイスアワード:50% インディペンデントスピリット賞:60% 全米映画俳優組合(SAG)賞:50% 全米製作者組合(PGA)賞:70% ロサンゼルス映画批評家協会賞:40% |
イニシェリン島の精霊 | ゴールデングローブ賞(ミュージカル・コメディ部門):10% |
フェイブルマンズ | ゴールデングローブ賞(ドラマ部門):30% トロント国際映画祭:30% |
西部戦線異状なし | 英国アカデミー(BAFTA)賞:20% |
エルヴィス | |
TAR | ロサンゼルス映画批評家協会賞:40% ニューヨーク映画批評家協会賞:0% |
ウーマン・トーキング 私たちの選択 | |
逆転のトライアングル | カンヌ国際映画祭:10% ヨーロッパ映画賞:0% |
アバター ウェイ・オブ・ウォーター | |
トップガン マーヴェリック | ナショナル・ボード・オブ・レビュー:10% |
この%が表すのは、その映画賞を受賞した作品がアカデミー賞作品賞を受賞した確率=一致率(過去10年間)です。
まず、作品賞を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は前哨戦を総なめにし、他の作品を寄せ付けない圧倒的な成績でアカデミー賞を迎えることになりました。
そして、そのどれもが一致率の高い賞ばかりであり、もはや作品賞の受賞に疑う余地はありませんでした。
アカデミー賞の続編作品に対する評価
アカデミー賞作品賞において、シリーズものの作品が受賞することは非常に難しく、歴史上2作品しかありません。
まずは、その2作品について紹介します。
ゴッドファーザー PART2
出典:https://video.unext.jp/title/SID0002597
1972年に公開されたシリーズ1作目「ゴッドファーザー」の続編となる作品。
1作目もアカデミー賞で作品賞を含む3部門を受賞しており、映画作品において大名作の一つとなっています。
本作品では、1作目で主演を務めたマーロン・ブランドの存在感に負けないほど、主演のアル・パチーノや助演男優賞を受賞したロバート・デ・ニーロが圧倒的な存在感を世界に示しました。
- 作品賞
- 監督賞
- 助演男優賞
- 脚色賞
- 美術賞
- 作曲賞
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
出典:https://video.unext.jp/title/SID0004060
2001年からスタートした「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの3作目の作品。
本作品ではアカデミー賞11部門を受賞し、歴代最多部門受賞となリました。
シリーズ1作目から評価は非常に高く、3作全てアカデミー賞を受賞しています。
その中でも3作目となる本作品は傑作ともされ、今もなおシリーズ作品の金字塔として語り継がれています。
- 作品賞
- 監督賞
- 脚色賞
- 美術賞
- 音響賞
- 歌曲賞
- 作曲賞
- 編集賞
- 視覚効果賞
- 衣装デザイン賞
- メイク&ヘアスタイリング賞
この2作品のに共通するのは、「シリーズを通して賞を受賞している」ということです。
『ゴッドファーザー』は、シリーズ3作品中2作品が作品賞を受賞しており、3作目も受賞とはなりませんでしたがノミネートはされていました。
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』は、最終章となった本作品で作品賞を受賞しており、過去2作品もノミネートされています。
この観点から『トップガン マーヴェリック』で考えてみると、前作である『トップガン』は歌曲賞を受賞したものの、作品賞にはノミネートすらされておりません。
やはり、1作目の評価が高ければ、それを踏まえた評価が続編にもされている、というように捉えるのが妥当でしょう。
まとめ
今回の記事では、映画『トップガン マーヴェリック』は、なぜ、アカデミー賞作品賞を受賞できなかったのか?を解説しました。
ポイントをまとめると、以下のようになります。
- 作品賞を受賞するためには、監督賞にノミネートも必要
- 前哨戦の成績が良くなければ、作品賞の受賞は難しい
- シリーズを通した評価が必要であり、1作目が大事
個人的な意見として、主演男優賞や撮影賞にノミネートされなかったのは少し残念な気持ちでした。
もちろん、それぞれの賞を受賞した作品などについては納得していますし、主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーのスピーチでは涙したほどです。
また、作品賞についても、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が受賞したこと自体も歴史的快挙であっただけに、とても感動しました。
ただ、オスカー無冠のトム・クルーズが受賞するチャンスとして、最も可能性の高い作品が本作品なのではないかと思っていました。
それほど本作品の完成度の高さは歴史に名を残すものであることに間違いはないのですが、60歳ながらもバリバリ現役の彼が、また別の作品で成し遂げてくれることを大いに期待しましょう!