映画『フェイブルマンズ』は見ましたか?
2023年3月3日に日本で公開され、あの名監督のスティーブン・スピルバーグ監督の最新作です。
スピルバーグ監督自身の半自伝的作品と言われ、映画を愛した少年の人生を描いています。

どんな人生だったのか、とても気になりますね!
映画への愛が詰まった本作品は、2023年ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)を受賞し、アカデミー賞でも作品賞最有力候補と言われています。
この記事では、映画『フェイブルマンズ』のあらすじ・レビューを紹介するとともに
- 少年サミーと映画との出会い
- 映画は何を映していたのか、サミーは何を映そうとしたのか
- サミーや家族、それぞれの決断とは?
という点をポイントとして解説します!
※ネタバレを含みますので、まだ見ていない方はご注意ください。
また、2023年のアカデミー賞の行方についても解説していますので、そちらもぜひチェックしてみてください!
それでは、いきましょう!
概要


スティーブン・スピルバーグ監督が、「この作品を撮らずして、キャリアを終えることはできない」と言っており、自身のルーツを辿った、非常にハートフルな内容になっています。
半自伝的作品、と言われているものの、今のスピルバーグ監督が存在している理由を存分に味わえる実話的な内容も含まれています!
この年の主役に躍り出るかのように、前哨戦のトロント国際映画祭を制し、アカデミー賞最大の前哨戦であるゴールデングローブ賞でも作品賞を受賞し、アカデミー賞の受賞に大手をかけているような状態です。
スピルバーグ監督作品のファンの方も、そうでない方も十分に楽しめる作品です。
予告動画
あらすじ
1952年、少年サミーは両親に連れられ、初めて映画館に行くことに
「暗い場所は怖い」と言って嫌がっていたけれど、大迫力で見る映画に心を奪われ、幼いながらも自分自身でビデオカメラを持つようになる
次第に友人や家族を巻き込んで映画撮影を行い、瞬く間に映画撮影の技術は向上していく
しかし、自らの将来の道が決まったかのように思えたが、その道を進むには多くの問題があった
ネタバレ解説
それでは、本作品のネタバレ解説にいきましょう!
改めて本作品のポイントをおさらいします。
- 少年サミー、映画との出会い
- 映画は何を映していたのか
- サミーにとって映画とは?
それぞれ解説していますので、ぜひチェックしてみてください!
※ここからはネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。
少年と映画の出会い


両親に連れられて初めて映画館に行ったサミーは怯えていました。
「暗くて怖い」
サミーと同じ経験をしたことある方はいますか?



私は初めて映画館に行った時、暗いのが怖くて泣いてしまいました
母が怖がるサミーにこう言います。
「夢のようなものだよ」
すごく素敵な言葉ですよね。
暗い中で見るから夢に似ているという部分と、映画を見ている時間がまるで夢のようなものである、という二つの意味が宿っている言葉でした。
そして映画館で見た映画『地上最大のショウ』に影響を受け、夜も眠れなくなってしまいます。
「怖いけど、わくわくして自分でも真似てみる」という新しい世界の扉を開いたサミーは、映画の虜になってしまいました。
それから周りを巻き込み、映画撮影の技術もどんどん向上していきます。
友達をキャストに撮影した西部劇や戦争映画は、まさにスピルバーグ監督自身のルーツであることを強く感じ、アカデミー賞を受賞した映画『プライベート・ライアン』など、現代にの作品への繋がりを感じられるシーンでしたね。
「趣味」ではなく、自身の人生そのものへ


映画に夢中になったサミーにとって、もはや映画は趣味の域を超えていました。
子どもでは普通手の届かないような映写機などを揃え、常にカメラを手放せないでいました。
そこに大きな障壁となったのが、科学者である父の存在です。
「あくまで趣味だろう」
と真剣に映画の道を目指すことに取り合わない様子で、「人の役に立つことを志しなさい」と伝えます。
当時(1960年代)、ハリウッド映画の市場は若干低迷していたので、職業としてまだ一般には受け入れられ難い面があったのかもしれません。
そんな中、もともと映画界に携わっていたボリスおじさんが登場し、「お前は家族と映画の板挟みだ」と言い放ち、どちらか一方しか選べないことへの覚悟を問われます。
これは夢を追いかける全てのティーンエイジャーに当てはまるジレンマですよね。
Youtuberなどの台頭で、一時期は「好きなことで生きていく」という言葉も流行しましたが、それは決して「好きなことだけができる」という楽観的なものではありません。
好きなことをするために、その影にはいくつもの手放さなければならない大切なものがあったはずです。
リアルかフェイクか – 映画に対するサミーの思い


映画に夢を見ていたサミーに突如現実が訪れます。
それは、母の不倫でした。
映像として残るものであったために、見つけてしまったサミーは映像が嘘をつかないもの(リアル)であることを知り、その無常さ感じてしまいます。
そして、破滅を導く怖さから映画を撮ることをやめてしまっていました。
その後高校生になり、カルフォルニアに引越したサミーはユダヤ人差別を受け、いじめられてしまいます。
1960年〜70年代ですから、まだ人種差別が蔓延る時代ですよね。
実際にスピルバーグ監督が体験したものであり、この経験から反ユダヤ主義に関する映画『シンドラーのリスト』などを制作することになったと語られています。
そんなサミーがいじめから抜け出せたのは、やはり映画でした。
クラスの休暇の様子を撮影し、いじめっ子の親分を悪く映すのではなく、最も輝かしく映していました。
当の本人は「あんなのフェイクだ!」と激怒しますが、その様子にいじめっ子の覇気はなく、サミーが少し認められた瞬間でもありました。
フェイクニュースなどをよく耳にしますが、映像は編集さえすればどのようにも作り変えることができます。
それでもサミーは決して映画を復讐の道具にはせず、映画として必要な編集(フェイク)を行うに過ぎませんでした。
サミーの映画に対する意識が強く感じれた瞬間でもあり、「たとえ、敵であっても許す」というスピルバーグ監督作品の礎になっているように感じました。
サミーは、不倫をした母も、いじめてきたクラスメイトも、映画を通して許してあげていましたね。
これはフェイブルマン“ズ”の物語


本作品は、サミー自身に焦点を当てながらも、常にその周りいる家族の事情を非常にリアルに映しています。
サミーをしっかり認めてあげるけど自分に正直な芸術家の母と、優しいけれどリアリストな科学者の父親を対象的に描いていますが、一方でその芯には子どもへの愛が通っていることも描かれていました。
サミー自身も両親をとても大切にしており、特に同じ芸術家気質の母にはとことん寄り添っていましたね。
ボリスおじさんが「家族と映画のどちらかしか選べない」と言っていましたが、サミーはその板挟みの中を家族と映画への愛で脱出し、どちらも捨てない選択をしました。
今までなかなか理解ができなかった芸術家としての生き方を改めて知った父が「お前は諦めない人間だ」とサミーを映画への道に導くシーンはグッとくるものがありましたね。
かつて芸術家であった母を認めてあげられなかったことに対する後悔を抱き、リアリストでありながらも「諦めない」という曖昧な表現で芸術家としてのサミーの人生を認めてあげることができた瞬間でした。
スピルバーグ監督は、本作品におけるインタビューで「親としてでなく、一人の人間として尊敬していた」と語っています。
一人の人間として描いたからこそ、母の不倫や家族の別れを愚直に描き、大人を含めた人間の成長を捉えているのでしょう。
神様との出会い


父親からも背中を押してもらい、晴れて映画の道に進むことになったサミーは、制作会社である人物に出会うことになります。
そう、それこそ映画の神様とも崇められた伝説の映画監督「ジョン・フォード」です。
アカデミー賞監督賞の最多受賞記録を現在でも保持し続け、後世に多大なる影響を与えた人物です。
彼の監督作品がずらりと並んだ部屋でサミーは聞かれます。
「芸術とはなんだ?その絵を見てどう思う?」
サミーがたじろいでいると、「地平線はどこにある?地平線は下か上に映すと絵になるんだ。真ん中に映してはダメだ」と言われます。
このシーンは有名な実話で、過去にスピルバーグ監督自身の言葉で語られたエピソードでもあります。
そして、「頑張れよ」とぶっきらぼうながらも温かい声をかけられたサミーは、これから味わう栄光を辿るかのように歩いていくのでした。
半自伝的な作品でありながらも、こういうシーンを描くあたり、本作品のエンターテインメント性を感じられずにはいられませんよね。
気になるアカデミー賞の行方
#TheFabelmans has been nominated for 7 Academy Awards. #Oscars #Oscars95 pic.twitter.com/fjOiAYzkUO
— The Fabelmans (@thefabelmans) January 24, 2023
注目のアカデミー賞まであとわずかに迫り、ますます本作品への注目度は高まっています。
それぞれ具体的に見ていきましょう!
作品賞を含む7部門にノミネート!
2023年のアカデミー賞では、7部門にノミネートされています。
ノミネート部門は以下のとおりです。
- 作品賞
- 監督賞
- 脚本賞
- 助演男優賞
- 助演女優賞
- 作曲賞
- 美術賞
期待のかかる作品賞の受賞は?
2023年のアカデミー賞では本作品の期待度は非常に高く、作品賞受賞の可能性も十分にあります。
その裏付けとして、事前に行われた映画賞や映画祭でも最高賞に輝きました!
- ゴールデングローブ賞
- トロント国際映画祭
ともに世界でも有数の場でありますので、前哨戦の戦績としては申し分ないでしょう。
一方で、他の候補作品も非常に有力なので、熾烈な争いが予想されます。
特に注目を集める作品
- イニシェリン島の精霊
- エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
- 西部戦線異状なし
この中から、本作品が作品賞に輝くことに期待しましょう!
他の有力作品についてもレビュー記事を公開していますので、ぜひチェックしてみてください!






惜しくも受賞ならず・・・
2023年3月13日に第95回アカデミー賞授賞式が開催されましたが、本作品は惜しくも無冠に終わりました。
7部門もノミネートされていただけに、少し残念な結果となってしまいましたね。
アカデミー賞では無冠に終わりましたが、その他の映画祭などを踏まえると評価されていたことには変わりありません。


まとめ
今回は、映画『フェイブルマンズ』のあらすじ・レビューとともに、ネタバレ解説を紹介しました。
ポイントとしては
- 怖かったはず映画は夢のようで、自分を虜にした
- 映画とは、リアルとフェイクをどちらも映し、時に破滅にも輝きにも導く可能性のあるものであった
- 家族と同様に切り離せないものであり、自らの進むべき道となった
となりました。
みなさんは、どのような感想を抱きましたか?
これからも最新作品を紹介していきますので、ぜひチェックしてみてください!