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asa(あさ)
映画が大好きな28歳会社員

年間150本程度の映画作品(洋画がほとんど)を鑑賞している映画好きです◎

アカデミー賞で輝く俳優・女優の姿に感動し、アカデミー賞などの映画賞をもとに映画の魅力を発信しています。

【ネタバレ解説】映画『逆転のトライアングル』 格差への皮肉に満ちたアカデミー賞候補作品!

2023年2月、映画『逆転のトライアングル』が公開されましたね!

カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞し、アカデミー賞では作品賞を含む3部門にノミネートされており、非常に注目度の高い作品となっています。

今回の記事では、映画『逆転のトライアングル』の概要、あらすじを紹介するとともに、

  • カールが感じる男女の関係性
  • 日常に潜む格差とは?
  • 豪華客船の転覆によってどうなったか
  • カールの中で起こった矛盾とは?
  • アビゲイルにとっての天国とは?

という点をポイントとして、ネタバレ解説しています。

すでに見た方も、これから見る予定の方も、より作品を楽しめる内容になっていますので、ぜひ参考にしてもらえると嬉しいです。

また、アカデミー賞の行方についても解説していますので、そちらもチェックしてみてください!

それではいきましょう!

目次

概要


出典:映画『逆転のトライアングル』公式サイト(https://gaga.ne.jp/triangle/

2022年のカンヌ国際映画祭にて、最高賞のパルムドールを受賞した作品です。

格差社会への痛烈な皮肉が描かれていて、人間の欲深さや滑稽さに笑える場面がありながらも、実際の社会について考えさせられるような内容になっています。

カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した2018年公開の映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』などで監督を務めたリューベン・オストルンドが監督を務め、豪華クルーズの船長として、映画『スリー・ビルビード』などに出演しているウディ・ハレルソンが出演しています。

ブラックコメディを描いた本作品は、2023年のアカデミー賞においても作品賞を含む3部門にノミネートされています。

監督:リューベン・オストルンド
出演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン・クリーク、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソン
時間:147分
制作:スウェーデン、イギリス、アメリカ、フランス、ギリシャ
ジャンル:ドラマ

予告動画

あらすじ

お互いにモデルを生業としながらも、彼女のヤヤとの格差を感じずにはいられないカールは、不満を感じながらもヤヤと豪華客船のクルージングに参加することになる

参加者は全員セレブで、スタッフに対してもわがままな態度を取り、贅沢で自由気ままな旅を楽しんでいた

しかし、豪華客船が襲われ転覆してしまい、生き残った乗客は無人島に漂着してしまう

その無人島では、生存者が生き残るためのサバイバル状態となるが、その中のヒエラルキーで最も頂点に立ったのはトイレの清掃員であった

ネタバレ解説

それでは、本作品のネタバレ解説にいきましょう!

改めて本作品のポイントをおさらいします。

  • カールが感じる男女の関係性
  • 日常に潜む格差とは?
  • 豪華客船の転覆によってどうなったか
  • カールの中で起こった矛盾とは?
  • アビゲイルにとっての天国とは?

それぞれ解説していますので、ぜひチェックしてみてください!

※ここからはネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。

①カールの中で感じる違和感

お互いにモデルの仕事を行いながらも、ガールフレンドのヤヤの方が人気で稼ぎもある状態です。

その現状にもなかなか満足のいっていないカールでしたが、二人で食事に行った会計の際に、当たり前のようにカールに支払わせようとするヤヤにに対して、カールは激怒しました。

食事の席では男性が支払うのは当たり前であると言わんばりのヤヤの態度にカールは「あくまで均等であるべきだ」と言います。
タクシーの運転手も「絶対に闘い続けろ」と応援します。

「利用したいのか」と問い詰められたヤヤは、はっきりとカールを食事代のために利用していると告げ、カールはそれ以降もヤヤに対する執着心を見せるようになります。

「男性が奢る奢らない論争」は、日本でもよく起こっていますよね。

あくまで当人の関係の中で納得のいっていることであれば他人がとやかくいう必要なないのですが、カールにとって、それは平等ではないことでした。

男性が会計を全て出すのは、女性が美しく保つことに対するお礼だと主張される方がいるのに対し、カールのように「利用されている」と思ってしまう人もいるのかもしれません。

最も大切なのは、お互いに対するリスペクトがあった上で決められるべきことだということなのでしょう。

②あらゆる場面で起こる“格差”

本作品のテーマは、“格差”です。

貧富の差が主題となっていますが、本作品では至る場面で“格差”を感じます。

主に“格差”が感じられた場面は以下のとおりです。

  • 「男性モデルは女性モデルと比べて収入が1/31程度しかない」というインタビュアーが嘲笑する
  • 「H&M」では嘲笑し、「バレンシアガ」では顔を引き締める
  • 「人類は平等」と謳ったファッションショーで、後から来たセレブのために席を移動させられる
  • 接客を行う華やかな白人のスタッフと清掃などを行うアジア系のスタッフ
  • 「人類みな平等だから、働かずに泳ぎなさい」と言いながら、シャンパンを持って来させるスタッフ

このように男女、貧富、人種などで差を感じさせる演出となっていて、後半の展開に向けた壮大な前フリになっていましたね。

③船と格の転覆

豪華客船が手榴弾に襲われたことにより、セレブたちの人生は一変します。

自らが製造していた手榴弾で爆発してしまう、という非常に滑稽なシーンで、逆転の幕が開けます。

豪華客船とセレブは、堕ちていくものとしてイコールの関係で描写されていました。

  • 見た目は豪華だが、見えない部分でのスタッフの支えがなければ成り立たない船
  • 自分の思い通りの人生を送ってきたが、お金がなければ何も抵抗のできないセレブ

お互いにあえなく闇に沈んでいくこととなってしまいましたね。

芸能人のスキャンダルや政治家の汚職など、たった一つの出来事で、何においても一瞬で転落してまいます。

私たちが築き上げているものは、とてもかけがえのないもので、もちろん素晴らしいものばかりだと思います。

しかし、そればかりに頼っていてはいつか転落する日がくるかもしれないので、常に自身の足元を見直す必要があるのかもしれません。

④真実の愛も欲望には勝てない

カールは、食糧のためにアビゲイルと身体の関係を持ちます。

その様子を見た生存者はみな嘲笑し、ガールフレンドのヤヤは憤っていました。

それでも、カールは「生きていくためには仕方がない」と言わんばかりに、自らを正当化して関係を続けます。

ここで思い出されるのは、冒頭のシーンです。

ヤヤに食事代のために利用されていることに怒ったカールは、「真実の愛」に対するこだわりを見せていました。

お互いの利益のためではなく、お互いに対する想いがあってこそ成り立つ関係だと言いたいのでしょう。

しかし、真実の愛など微塵も感じられないように己のために身体を売り、ヤヤを裏切っています。

結局人間は己のために他人を利用する生き物なのです。

食糧を餌に、カールの身体を求めたアビゲイルも同様です。

カールも、ヤヤから利用されていることに怒りながらも、結局はインフルエンサーとして有名だったヤヤを頼り、ヤヤに付いてクルージングに参加していました。

追い詰められた人間の滑稽さと、ひとりでは生きていけない愚かさを感じさせるシーンでしたね。

⑤誰かにとっての天国は誰かにとっての地獄

無人島で立場が逆転し、ヒエラルキーの頂点となったアビゲイルは、これまでの鬱憤を晴らすかのように横暴な態度をとっていました。

セレブたちをこき使い、金目のモノと引き換えに自分の城(船)で寝ることを許可するなど、まさに天下となっていましたね。

しかし、どんなことにもいつかは終わりが訪れます。

ヤヤが助かる一縷の望みを見つけた際に、アビゲイルはヤヤを殺そうとしていました。

アビゲイルにとっては、無人島に漂流し、みんなで自給自足する生活が天国となっていて、それが終わって欲しくなったのです。

せっかくあの虐げられ続けたひどい生活から抜け出したんです、そう思うのも無理はないでしょう。

ヤヤは「あなたを付き人として雇う」とアビゲイルに告げますが、果たしてアビゲイルにとって嬉しいことでしょうか?

もしかしたら「また、あの地獄に戻るのか」と絶望を感じたのかもしれません。

こうして、格差で作られた世界は、常に誰かにとっての天国と地獄が存在しているように感じさせる最後となっていましたね。

映画賞を席巻!

カンヌ国際映画祭 パルムドール受賞

本作品は2022年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞しました。

同監督の作品ザ・スクエア 思いやりの聖域』でもパルムドールを受賞し、『逆転のトライアングル』2度目の受賞となりました!

同監督がカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞するのは、史上3人目の快挙となります。

2023年アカデミー賞 3部門ノミネート!

2023年のアカデミー賞では作品賞を含む3部門にノミネートされています。

ノミネート部門は以下の通りです。

  • 作品賞
  • 監督賞
  • 脚本賞

カンヌ国際映画祭を獲ったこともあり、やはり注目度も非常に高いものがあります。

アカデミー賞作品賞とカンヌ国際映画祭パルムドールのどちらも受賞というのは歴史上ほとんど起こっておらず、どちらも受賞している作品として有名なのは、『パラサイト 半地下の家族』です。

元々、それぞれの趣旨が異なるので、受賞する作品が異なるのは当然と言えば当然ですよね。

とはいえ、『パラサイト 半地下の家族』以来の快挙を期待しましょう!

※惜しくもアカデミー賞の受賞とはなりませんでした。(2023年3月13日追記)

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まとめ

今回は、映画『逆転のトライアングル』のネタバレ解説を行いました。

ポイントとしては

  • カールは「男女であっても均等であるべき」だと考えた
  • 豪華客船とともにセレブたちの富と名声も転覆していった
  • 人間は、利用されることを嫌がりながらも、いざいというときは利用する愚かな生き物である
  • 衣食住が満足にある生活よりも、自分が崇められる世界こそがアビゲイルにとっての天国

ということになります。

本作品は、ウディ・ハレルソン演じる船長がマルクス主義者として、セレブに対して強烈な皮肉を伝える場面があります。

当のセレブたちはのたうち回っていたので耳に届いていないでしょうが・・・

そこで語られるのは「共産党宣言」という本の内容です。

その中の「今日までのあらゆる社会の歴史は階級闘争の歴史である」という文にあるように、本作品も最後まで格差を描き切りました。

本作品を見るまでは、「貧困層の大逆転劇?」と思っていましたが、実際はそんな浅いものではありませんでしたね。

もちろんアビゲイルの大逆転は爽快なものもありましたが、それ以上に格差や階級がどの世界でも存在し、この問題を考える難しさを感じました。

本作品がどこまで現代の世界を如実に映していて、どこまで強いメッセージとして世界に届くのか。

カンヌ国際映画祭に続く栄冠への期待を持ちながら、本作品の行方を見守りましょう。

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